サッカーの中継といえば、ボールの保持者を中心とした俯瞰で伝えるのが「一般的」だ。
そんな「常識」を、NHKがぶち壊してしまった――。
キーパーの視点中心に画面4分割
話題となっているのは、2017年4月16日に開催されたJリーグ・FC東京と浦和レッズの1戦。この試合を放送したNHK(BS1)はなんと、
「徹底マーク!ゴールキーパー」
と題し、ゴールキーパー(GK)の視点を中心とした中継を行なった。
放送画面は4分割と、普段なじみのないスタイル。ゴール裏からのGKの視点を中心とした試合映像(左上)、GKを正面から専用カメラでとらえた映像(右上)、GKとディフェンスのラインのトラッキングデータ(左下)、GKに関する豆知識や視聴者からの関連ツイート(右下)――を伝えた。
中継は、「GK愛」にあふれていた。ゴール付近での攻防時には、味方選手へのGKの指示を音声マイクで拾って紹介、試合のハイライトもGKにスポットを当てて振り返った。
解説も、元サッカー日本代表GKの小島伸幸氏らによるGK中心の熱い解説が繰りひろげられる。試合後には、両チームのGKである西川周作選手(浦和)と林彰洋選手(FC東京)にインタビューを敢行するほどの徹底ぶりだ。
番組サイトでは、
「PKストップやスーパーセーブ、時にチームを勝利に導くヒーローとして注目を集めるゴールキーパー。しかし、サッカー中継のなかで、その姿が映ることはほとんどありません。ところが試合中の選手の動きを記録したトラッキングデータを見てみると、J1のキーパーは試合中5~6kmほどの距離を移動していることがわかります。彼らはいつ、何のために動いているのでしょうか?」
といった疑問を投げかけており、その答えが今回の中継となったわけだ。
「ゴール裏で見てる気分」
今回の「異例すぎる」サッカー中継に、ツイッターでは、
「新たなサッカーの見方を提示してくれたNHKと解説陣に感謝」
「見てておもしろかった! ゴール裏で見てる気分!」
「分かりやすい解説と、ひたすらGKのみを追うカメラ、控えめに言って最高でした」
と賞賛の声が多数上がった。
なかには、
「これまでGKはどれだけ魂込めてスーパーセーブしても『ニュースのハイライトでカット』『ミスした時だけ大きく取り上げられボロカス叩かれる』て扱いだった。そんなGKにGK専用カメラ放送で光が...。泣きそう」
と感極まるユーザーもいた。
なお、試合は1対0で浦和がFC東京を下した。