大手回転すしチェーン「無添くら寿司」を展開する「くらコーポレーション」(大阪府堺市)がネット上の書き込みへ取った対応が、「過剰反応ではないか」などとインターネット上で物議を醸している。
騒動の発端となったのは、あるネットユーザーが株式情報などを扱う掲示板に書き込んだ次のような言葉だった。「無添くらなどと標榜するが、何が無添なのか書かれていない。(略)イカサマくさい。本当のところを書けよ」――。
「Yahoo!ファイナンス」の書き込みが発端
問題となった「イカサマくさい」との書き込みは、2016年3月に株式投資家なども多く目を通すとされる「Yahoo!ファイナンス」内の掲示板に寄せられた。これに対し、くら社側が最初に取った対応は、広報IR部門の社員が掲示板上で直接投稿者に対し「反論」するというものだった。
まずくら社側は、投稿者に対し「くら寿司ではすべての食材から四大添加物(化学調味料・人工甘味料・合成着色料・人工保存料)を排除しております」と説明。その上で、詳細については広報担当まで問い合わせるように呼びかけた。これに対し、問題の投稿を寄せたユーザーは、
「都合の悪いことはくらコーポレーションIR担当に聞け。ということか(略)ホームページで公表するのは 都合が悪いらしい」
などと返信。続けて、四大添加物とは何なのか、「使っていないもの」と「使っているもの」をより具体的に公表して貰わなければ納得できないとも書き込んだ。
こうした一連の書き込みに対し、くら社側は「当社は東証一部上場企業として社会的責任を担い商品を提供させていただき適切な表示をしております」と反論。さらに「事実と異なる内容の投稿が続けられ憤慨しております」などと書き込んだ上で、
「匿名での誹謗中傷は看過できないためこの場を借りて反論させていただいております。これより法的手続きの準備に入らせていただく所存です」
とも投稿した。
その後、くら社側は名誉が侵害されたとして、プロバイダー業者「ソニーネットワークコミュニケーションズ(ソネット)」に投稿者の氏名と住所を開示するよう要求した。だが、ソネット側がこの要求を拒絶したため、くら社側は東京地裁へ投稿者の情報開示を申し立てた。
東京地裁、くら社の「投稿者情報」開示請求を棄却
東京地裁(宮坂昌利裁判長)は17年4月12日の判決で、くら社側の要求を棄却。同日夕の産経新聞(ウェブ版)の報道によれば、宮坂裁判長は「(問題の書き込みは)くら社の社会的評価を低下させるものではない」と説明。その上で、仮に社会的評価の低下があり得るとしても、
「書き込みはくら社の表示に対する問題提起であり、公益に関わる内容だ」
「くら社は四大添加物以外の添加物の使用の有無はホームページなどで表示しておらず、書き込みは重要な部分で真実だ」
などと話し、書き込みに「違法性はない」と結論付けたという。
この判決を受けて、くら社側は問題の書き込みに対する見解をまとめた文章をホームページ上で公開。投稿の内容について「看過できない点」があると切り出した。まず、添加物使用の有無の詳細を公表しないのか、という指摘については、
「物理的に店舗内ですべてを表示することができないことから、全食材の情報につきましては本部にて厳正に管理しております」
と改めて反論。さらに、問題の書き込みの中にあった一部表現についても、
「我々が創業以来、長年、最も大事にして取り組んできた四大添加物不使用における事実に対して『イカサマくさい』と侮辱された」
と強い口調で指摘した。
さらには、「現時点では裁判所からの正式な文書が届いておらず確認できておりません」としつつも、上記した産経記事の内容に対しても、
「書き込みの内容に対し、公益性があるという発言を裁判官がなされたという記事は、匿名で根拠のない無責任な書き込みにも該当しているとはにわかに信じがたい」
と疑義を呈していた。
くら社「発表している内容が全て」
今回くら社側が取った一連の対応について、ツイッターやネット掲示板では、問題となった発端の投稿がくら社側の食品添加物の表示に疑問を呈す内容と受け取れることから、
「誹謗中傷なのか?ただの消費者の率直な感想では」
「単なる一消費者の疑問にこの過剰反応はたまげた」
「これ下手すりゃ言論弾圧じゃないの?提示した情報は鵜呑みにして信じろってこと?」
といった意見が数多く出ており、いわゆる「炎上状態」となった。
一方で、「毅然と反論できるだけの矜持を持ってやってるというのは好感が持てる」などと同社の対応に理解を示す声も出ている。
なお、くらコーポレーションの広報担当者は17年4月17日のJ-CASTニュースの取材に対し、
「発表している内容が全てです。これ以上のコメントは差し控えさせて頂きます」
とだけ回答した。