吉野家の「牛丼ジレンマ」 「一筋」感と「苦戦」の関係

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牛丼以外のメニューの存在感

   吉野家HDにとっては「トランプ相場」で、外国為替市場の円相場が円安傾向にあることも業績悪化要因となる。実は吉野家HDは第1~第3四半期(2016年3~11月)は円高傾向を受けて米国産牛肉の円建て仕入れ価格が下落したため、営業利益は前年同期比41.4%増の12億100万円と伸びた。しかし、米大統領選でトランプ氏が勝利後は円安に反転したことが、利益を押し下げる方向に働いている。

   もっと構造的な要因が「牛丼一本足打法」の問題だ。牛丼チェーンなんだから当たり前と思う人もいるかもしれないが、例えば、カレーなど牛丼以外の定食メニューが豊富な松屋は売上高に占める牛丼の割合は2~3割とされる。「すき家」もカレーや海鮮丼を注文する客が比較的多い。これに対し吉野家は牛丼が5割を占めるとされている。吉野家も「豚丼」や「牛すき鍋膳」などが定着し、カレーも導入してはいるが、牛丼を超える存在感はない。「牛丼一本足」が問題なのは「低価格」のイメージが消費者の頭にこびりついている点だ。多様な定食なら、牛丼の価格体系から消費者のイメージがいったん離れるので600円程度でも大きな抵抗はないかもしれない。しかし、牛丼は「並盛280円」時代の印象が消えていない可能性がある。さらに、吉野家は定期的に客寄せのための値下げキャンペーンを打つ。一時的に客足は回復するのだが、これが「安価」のイメージを消費者に刷り込む悪循環となっているようだ。

   吉野家といえば牛丼、それが客を呼び寄せるキラーコンテンツではある。しかし、一時は「デフレの勝ち組」として低価格の代名詞になったことが、業績にとって足かせとなっている可能性がある。

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