国民生活センターは2017年4月13日、「格安スマホ」のトラブルが増加していると発表した。14年の相談件数が139件だったのに対し、16年は1045件寄せられた。
しかしそのトラブルの中身は、というと「使い方を相談する実店舗がない」といったもので、ネット上では「当たり前だろ」「だから安いんだろ」などと苦言が多数出る事になった。専門家は従来のキャリア利用者と、「格安スマホ」の利用者では客層が必ずしもイコールではないため、よく調べた上で選択したほうがいい、と苦言を呈している。
「サポートの電話窓口しかないが、何度かけても話し中でつながらない」
一般的に「格安スマホ」というのは「格安SIM」という低価格なインターネット通信ビジネスモデルから誕生した。「SIM」はスマホや携帯電話に入っているデータ通信、電話通信を管理するICカードで、「格安SIM」はドコモ、au、ソフトバンクといったキャリアから回線を借りた業者(MVNO)のカードという位置づけになっている。MVNOは国内でヤフー、楽天、OCNといった大手企業グループを含め約180社が展開していて、使い方によっては毎月の通信料がキャリアと比べ2分の1、3分の1になったという報告もある。
「格安SIM」を装着するスマホはSIMフリーにしたiPhoneなどで可能だが、「格安スマホ」を謳う場合は、スペック(機能)を落とし低価格に作られたスマホや、型落ち(古い)スマホと「格安SIM」を組み合わせて販売するのが中心だ。また、「格安SIM」のビジネスモデルは、データ通信をターゲットとしたもののため電話はオプション的な扱いになる。慣れている人は無料電話アプリのLINE、Skype等を使って通話するが、一般的なスマホのようにキャリアを使った通話には「かけ放題」のようなプランを導入しているMVNOは少なく、一般的に30秒20円の通話料がかかる。電話を中心に「格安スマホ」を使う場合は、高額な通話料が発生する場合もある。MM総研調べによれば、16年3月末時点の「格安SIM」契約数は約540万回線で3年前の約7倍。18年3月末には1170万回線に成長するとの予測もあるとMM総研は発表している。
そんな「格安スマホ」に関するトラブルだが、国民生活センターに寄せられた相談はこうしたものだ。まず、
「インターネットから契約したが、使い方や色々な不明な点を問い合わせたくても、実店舗がなく、サポートの電話窓口しかないが、何度かけても話し中でつながらない」
という理由があった。
従来は事情に通じていた人が購入し恩恵に与っていた
また、故障したため修理に出したが、
「修理に 1 か月はかかり、代替機の貸し出しサービスはない。1 か月間スマートフォンが使えないのは非常に困る。初期契約解除を申し出たところ、対象外と言われた」
そのほかでは、メールアドレスの提供が無い。無料メールアプリを利用したが送信先はキャリアメール以外をブロックしていた、などがあった。
これに対しネット上では、「当たり前だろ」「だから安いんだろ」などと苦言が多数出ることになり、
「窓口もない、通信速度もそれなりだからの安さだからな 。リーズナブルには理由がある」
「クソ安い値段で同じサービス受けれると思ってたの?アホでしょ」
「こういうサポートが必要な人はMVNOにしちゃ駄目だよ」
などといったことが掲示板に書き込まれた。
今回、ITジャーナリストの井上トシユキさんにJ-CASTニュースが4月14日に話を聞くと、
「格安スマホは買った後に様々な設定をする必要があるため、従来は事情に通じていた人が購入し恩恵に与っていましたし、2台、3台と持ち用途に合わせて使ったり、故障した場合に備えたりしていました。キャリアを使い続けている人とは意識の違う存在だったんです」
と明かした。国民生活センターに苦情が寄せられていることについては、安いという事に目が奪われてしまった自分の甘さに気付いたけれども、店舗など直接出向いて相談できる場所が無いため、国民生活センターに八つ当たりしている状態ではないか、と予想した。一方で、MVNOは強引な商売をしているわけではないが、購入者に対して十分な説明をしているかといえば疑問が残るとした。スマホにあまり詳しくない人たちが購入すれば様々な不具合が出てしまい「格安スマホはダメだ」と誤解され、結果的に自分の首を絞める事にもなりかねない。
「とにかく購入を考えている人は事前にしっかりと調べ、購入後は相談できる人を見つけることですね。また、格安スマホ自体の売り上げは今後も伸びるでしょうが、爆発的にはならないと思います。楽で確実で安心な大手キャリアのままでいいのでは?と考える人は多いとおもいますから」
と井上さんは話していた。