高齢者の中には、同世代の人に比べ、頭の働きがしっかりして、驚くほどの記憶力を発揮する人がいる。こういう人は他の人と何が違うのか。
人間の脳は加齢に伴い萎縮していくが、ごく一部だが、他の高齢者よりも脳の量が減らず、それが理由で頭の切れが衰えない「スーパーエイジャー(超高齢者)」と呼ばれる人々が存在することがわかった。いったい、どんな人々なのだろうか。
80歳以上で50~60代の頭脳の持ち主たち
スーパー高齢者を日本でいえば、2017年4月現在、106歳で達者に講演活動を続けている日野原重明・聖路加国際病院名誉院長や、94歳で新聞に連載コラムを持つ作家で僧侶の瀬戸内寂聴さん、元スキーヤーで99歳の時にモンブラン山を滑降した故・三浦敬三さん(享年101歳)らが知られている。この人たちは、体がきわめて丈夫なだけでなく、頭脳も明晰だ。
「スーパーエイジャー」の脳を研究したのは、米ノースウエスタン大学の臨床神経心理学者アマンダ・クック博士らのチームだ。米国医師会雑誌「JAMA」(電子版)の2017年4月4日号に論文を発表した。論文によると、クック博士らは「スーパーエイジャー」の定義を、80歳以上の高齢者で、記憶力テストで50~65歳の年齢層と同程度の成績をとることができる人とした。そのテストとは、たとえば、短時間の間に15の単語を覚えてもらうとする。15分後にいくつ思い出せるか聞くと、80歳以上の高齢者は5つ思い出すのがやっとだ。しかし、スーパーエイジャーは9つ以上思い出せるという。
クック博士らは、記憶力テストの結果から「スーパーエイジャー」の定義に合う頭脳明敏な24人の男女に協力してもらった。そして、同年代で認知症がない「普通」の男女12人と脳を比較した。