このままでは、ほとんど輸入食材に?
普及していない主因がコストだ。グローバルGAPの場合、最初に認証を取得するために数十万円必要なほか、農場の規模によって年間10万~40万円の維持費用がかかる。もちろん、認証を得るために必要な倉庫への鍵の取り付けといった費用も必要だ。農水省は2016年度補正予算に認証取得を全額補助する事業に2億円を計上したほか、取得率の数値目標をつくり、2017年度の当初予算ではGAP普及に向けた研修費などに5600万円の予算を確保した。自民党からは全国の農業高校がグローバルGAPを取得するのを後押しする案なども出ているが、国内で販売している分には認証なしでも支障がないため、農家の認証取得意欲はなかなか高まらない。
五輪では約1か月の大会期間中に約1500万食を提供するとあって、日本の食文化を発信するチャンスと位置づけられてもいる。その材料が、このままでは、ほとんど輸入食材という笑えない事態になりかねないということだ。
この問題は五輪だけにとどまらない。政府は日本の農産物の輸出を、2019年に1兆円にすることを目標にしている。2016年の農林水産物・食品の輸出額は7502億円となり、4年連続で過去最高を記録したが、世界では60位程度にとどまる。特に欧州連合(EU)域内では流通食材の7割がGAPなどの認証を受けた農家の手になるもので、GAPの認証なしの輸出はほぼ不可能と見られる。
五輪開催という、日本の食を世界にPRする絶好の機会がありながら、十分に食材を提供できない懸念が、このままでは現実のものになりかねない。農業の競争力を高める機会にしたいという農水省の目論見通りに事を運ぶためには、取り組みを抜本的に強める必要がある。