セブン&アイ・ホールディングス(HD)が、米国の中堅コンビニエンスストア「スノコLP」から、コンビニ約1100店舗を買収する。2017年4月6日、発表した。買収額は33億ドル(約3660億円)と、同社による買収額では過去最大。国内市場が頭打ちになる中、セブンはこれまでも米国でのコンビニ買収を繰り返して店舗網を拡大してきており、今回の買収で米国でのコンビニ1万店体制が視野に入った。
セブン&アイは8月をめどに、スノコ社が米国で運営する店舗のうち8割程度を取得。同社の「Aプラス」の店名は順次、「セブン-イレブン」に変える。同社は現在、米国で約8600店舗を展開しており、米国のコンビニ市場で、店舗ベースで約5%のシェアを握る業界首位。2位以下をさらに引き離すことになる。
買収で「物流面でも相乗効果が期待できる」
買収するコンビニは米テキサス州や東海岸中心で、セブン-イレブンと店舗網と重なるため、物流面でも相乗効果が期待できるという。セブン&アイの井阪隆一社長は4月6日の決算説明会で、「米国でのコンビニ事業は成長領域。財務上のインパクトをカバーしてあまりある収益性の高い投資だ」とメリットを強調した。
コンビニ業界はこれまで、便利さを提供して国内で急成長を遂げてきたが、最近は各社による出店攻勢で飽和状態になり成長も鈍化、業界では合従連衡も進む。そのため、各社が近年、力を入れてきたのが世界市場への進出だ。
国内2位のファミリーマートは中国や台湾、東南アジアを中心に海外店舗を約6400店展開。3位のローソンは中国中心に海外で約1150店舗を運営している。4位のミニストップの海外店舗は約3000店で、中でも韓国での積極展開が目立つ――といった具合だ。
各社がアジアに焦点を当てて店舗展開を進めるのに対し、セブン&アイが米国に注力するのは、米国にセブン-イレブンのルーツがあり、ライバルを寄せ付けない強さがあるためだ。
次の成長ステージに乗せることができるのか
セブン-イレブンは、1970年代にイトーヨーカ堂の取締役だった鈴木敏文氏(セブン&アイ前会長)が、米国で当時約4000店舗を展開していた「セブン-イレブン」のビジネスに着目し、1974年に東京・江東区に「豊洲店」を開店させたのがはじまり。以来、おにぎりなど独自の商品開発やPOS(販売時点情報管理)を導入して独自のビジネスモデルをつくり、日本のコンビニビジネスの基礎を作った。
井阪社長が記者会見した6日は、25年間トップを務めた鈴木前会長が人事や経営をめぐる社内対立の後、退任を表明してからちょうど1年のタイミング。後を受けてトップに就いたのが、国内コンビニ事業のセブン-イレブン・ジャパン社長だった井阪氏だった。
こうした経緯から、セブン-イレブンを語る際にはコンビニ育ての親とも言えるカリスマ経営者、鈴木前会長の光と影が常について回る。井阪社長が独自色を出して国内で頭打ちのコンビニを次の成長ステージに乗せることができるのか、大きな注目を集めている。