ベトナム国籍の小学3年生、レェ・ティ・ニャット・リンさん(当時9)の殺害事件で逮捕された男は、リンさんが通う小学校の「保護者会会長」だった。
登校時には通学路で見守りをするなど、児童に近い立場の組織のトップが起こした今回の事件で、インターネット上では「保護者会の信用が大暴落」などとして不信感が広がっている。児童の保護者が関わる団体として、PTAは今回の事件をどう受け止めているのか。
「知ってる人にも注意しなさいの世の中」
県警は2017年4月14日、リンさんの死体遺棄容疑で渋谷恭正容疑者(46)を逮捕した。同日昼の県警の発表時点では、動機は不明で今後取り調べなどの捜査で明らかにしていくという。
渋谷容疑者は、リンさんが通う千葉県松戸市立六実(むつみ)第二小学校の保護者会「二小会」の会長を務めている。複数の報道によると、登校時間帯にはほぼ毎日、リンさんの通学路上に立って「見守り活動」をしていたが、リンさんが行方不明になった3月24日は行っていなかった。その2日後の26日、リンさんは千葉県我孫子市にある排水路の橋の下で、遺体で発見された。
児童を守る立場の「保護者会会長」が起こした今回の事件を受け、ツイッター上では不信感が広がっている。
「同じ年頃の子供をもつ、保護者会会長みたいです。子供達を守るべき保護者会の会長が...絶句です」
「もう保護者どうしでも信用出来ない世の中になったのかなぁと思うと悲しいね」
「子供が安心して接することの出来る大人枠がどんどん狭くなっていく感じ。知らない人だけじゃなく、知ってる人にも注意しなさいの世の中...」
「今回ので保護者会の信用も大暴落だろうな」
教育評論家の尾木直樹氏も14日、ブログで「最も信頼寄せる頼れるPTA会長に襲われる!?」「地域の親 子どもたち 先生方の動揺はいかばかりでしょうか? もし本当なら子どもたちは何を信用すればいいのでしょうか?」と戸惑いを見せていた。
同様に保護者が関わるPTAでも困惑が広がっている。千葉県PTA連絡協議会の事務局長は、14日のJ-CASTニュースの取材に対し、「今回の六実第二小の保護者会は当協議会の加盟団体ではありませんが」と断った上で、事件を受けて「あまりにもショックで言葉を失います」と困惑した心境を話す。
「子どもの命を奪った犯人には激しい憤りを覚えます。児童や保護者に与える影響は計り知れません。しかし、容疑者の子どもの学校生活が阻害されるような事態があってはなりません」
「見守り活動は廃止できません」
事件を機に保護者会やPTA全体にまで動揺が広がっている状況に対し、千葉県PTA連絡協議会の事務局長は「子どもの健全育成のために一生懸命取り組む保護者はたくさんいます。その方々への信頼が揺らぐことはあってはなりません」と危機感を募らせている。
保護者会やPTAへの不信感が増しつつある状況だが、信頼回復について「特効薬はありません」としてこう話す。
「事件があったからというだけで、通学路の見守り活動は廃止できません。萎縮せず、これまでの活動を地道に続けていくしかないと思います。ただ、もっと保護者会のメンバー同士や学校職員、地域住民の方々とも密なコミュニケーションを取り、お互いによく知る関係をもっと構築していく必要があるでしょう。」
渋谷容疑者が会長に就いたのは、フルタイムで働く保護者が多い中で、見守りをはじめ毎日の活動をこなせる人がなかなかいなかったからではないかとの報道もある。こうした会長選任方法が事実だとしたら、問題はなかったかを尋ねると、「学校ごとに事情が違うので何とも言えませんが、PTAの中には、集まって話し合い、人物を把握した上で互選するところもあります」と話していた。
なお、14日午後の時点で同協議会には、小学校の児童を持つ保護者からの問い合わせや苦情などはないという。