若白髪は長生きできないってホント?

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   「ハゲの人より白髪の人の方がステキ」......。かつて「ロマンスグレー」などという言葉があり、白髪の男性は薄毛の男性を上から目線で見おろしたものだった。

   ところが、白髪が多い人ほど「アテローム型動脈硬化」という怖い心臓病のリスクが高まるというショッキングな研究が発表された。年齢に関係なくアブナイというから、「若白髪」の人は要注意だ。

  • なぜ若白髪になるのか、医師たちは興味津々(イラスト・サカタルージ)
    なぜ若白髪になるのか、医師たちは興味津々(イラスト・サカタルージ)
  • なぜ若白髪になるのか、医師たちは興味津々(イラスト・サカタルージ)

白髪が出来るメカニズムはわかっていない

   この研究の話の前に、「アテローム型動脈硬化」とは何か紹介しよう。日本医師会のウェブサイトによると、「アテローム型動脈硬化」は心臓発作などの症状が現れるまで自覚症状はほとんどない。3つのタイプの動脈硬化の中で最も多く、次のように説明している(要約抜粋)。

「大動脈や脳動脈、冠動脈などの太い動脈に起こる動脈硬化です。動脈の内膜にコレステロールなどのドロドロした、お粥状物質がたまり、アテローム(粥状硬化巣)ができ、次第に厚く付着して動脈の内側が狭くなります。アテロームが大きくなると、血管の表面の膜が薄くなって破れ、血栓が作られます。これを繰り返しながら動脈硬化が進み、血管が狭くなって閉塞します」

   一方、白髪がどうして出来るのかもおさらいしておこう。美容サイト「MAQUIA ONLENE」の「白髪のナゼ?に答えます」の中で、美容皮膚科医の高橋栄里さんはこう説明する(要約抜粋)。

「そもそも毛が黒く見えるのは、メラノサイト(色素細胞)が毛母細胞にメラニン色素を供給することによります。加齢や何らかの原因で、メラノサイトの数が減ったり、メラノサイトの働きが弱くなったりすると、メラニン色素が作られにくくなり白髪が増えていくのです。加齢やストレス、遺伝などが関係したり、体内の活性酸素が影響したりすると分かっていますが、残念ながら、完全な理由はまだ解明されていません」

「若白髪は心配ない」がこれまでの定説だったが...

   白髪のメカニズムはわかっていないのだ。そして、若白髪はなぜ出来るかについてもよくわかっていないという。

「10代後半から20代に白髪になるのを若白髪といいますが、遺伝的なところが大きいです。ただ、やはり謎が多くて一概には言えません」

   しかし、若白髪に関しては「特に心配する必要がない」というのが、これまでの定説だった。専門医がユーザーの疑問に答えるサイト「Ask Doctors」の中の「若白髪の原因は?」にはこう説明されている(要約抜粋)。

「親が若白髪の場合は若白髪になる確率は高まります。特に若白髪の人が他の病気になりやすいということはないので、特定の病気や栄養不足が若白髪の原因ではないと考えられています。また、若白髪だからといって、老化が進んでいるということではありません。若白髪の原因については十分には解明されていません」

   さて、本題の研究に入ろう。2017年4月の欧州心臓病学会で衝撃の研究を発表したのは、カイロ大学の心臓専門医アイリーニ・サミュエル博士だ。その論文を掲載した科学論文サイト「Eurek Alert」(電子版)の2017年4月8日付プレスリリースによると、サミュエル博士は、アテローム型動脈硬化と白髪の関係を調べるために、動脈硬化の疑いがあり、同大学病院を受診した545人の成人男性の協力を得た。そして、白髪の進み具合に応じ次の5つのグループに分けて分析した。(1)髪が全部真っ黒の人(2)黒髪が白髪より多い人(3)黒髪と白髪が半々の人(4)白髪が黒髪より多い人(5)髪が全部真っ白の人。

   患者たちの白髪の進み具合は、厳密に調べるために「白髪度合い」(グレーネス・スコア)の国際基準に基づき、2人の観察者が判定し平均値をとった。そして、年齢や糖尿病、喫煙歴、脂質異常症などの病歴とともに、血糖値、損傷したDNAの修復回数、酸化ストレス、炎症度、ホルモン量の変化、機能細胞の老化の進み具合などを検査した。これらはアテローム型動脈硬化の危険因子で、その数値を測ることで発症リスクを知ることができるという。

たとえ若くても白髪が濃い人ほど動脈硬化になりやすい

   その結果、次のことがわかった。

(1)「白髪度合い」のスコアが中級以上の人は、年齢に関係なく、アテローム型動脈硬化のリスクが非常に高くなる。

(2)「白髪度合い」のスコアが高くなるにつれ、各年代ともアテローム型動脈硬化のリスクが高くなる。

   つまり、年齢に関係なく白髪の度合いが増すと危険要因が大きくなるわけで、若くして頭が真っ白な「若白髪」の人は、高齢で頭が真っ白になっている人と同じくらい心臓病など動脈硬化になりやすいというのだ。

   なぜ白髪の度合いが動脈硬化の危険と関係あるのだろうか。サミュエル博士は、プレスリリースの中でこう語っている。

「私たちの研究は、実際の年齢に関係なく、髪の老化年齢が心臓病のリスクの指標になることを明らかにしました。しかし、白髪化がなぜ心臓病のリスクを高めるのか、メカニズムはわかりません。ただ、アテローム型動脈硬化の危険因子の細胞の老化、炎症、酸化ストレス、高血糖などは、皮膚の老化の指標にもなっており、白髪になるメカニズムと通じるところがあるのかもしれません。今後は心臓専門医と皮膚科の専門医が協力して研究を進めます。白髪の濃い人は、ぜひ定期的に健康診断を受けてください」
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