NHK「どらむでクッキング」がシュールすぎる 視聴者の心に火がついたワケ

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   プロのドラマーが叩くビートに乗って、出演者がノリノリで鍋や包丁を振るう――。NHK大阪放送局が制作した料理バラエティー番組『どらむでクッキング』が、インターネット上で「シュールすぎる」などと大きな反響を呼んでいる。

   この「料理番組」には、ロックバンド「LUNASEA」の真矢さんと、ミュージシャンで女優のシシド・カフカさんが出演。2人が刻む変幻自在のリズムから、料理におけるポイントを「音楽的に解説する」内容になっている。こうした前例のない「シュールな番組」が生まれた背景を、番組のチーフプロデューサーに聞いた。

  • 料理番組のスタジオに鎮座するドラムセット(NHK大阪提供)
    料理番組のスタジオに鎮座するドラムセット(NHK大阪提供)
  • 真矢さんのドラムに合わせて…
    真矢さんのドラムに合わせて…
  • 料理番組のスタジオに鎮座するドラムセット(NHK大阪提供)
  • 真矢さんのドラムに合わせて…

8ビートで野菜を刻む

   話題の『どらむでクッキング』は、関西地方限定でNHK総合が2017年3月28日に放送した一回きりの特別番組だ。その冒頭は、料理中の主婦が突如ドラムを叩き始める内容のオープニングアニメが流れた。

   オープニング終了後、画面はスタジオへ。中央に設置された調理台の両脇には、本格的なドラムセットが2台置かれている。そこで、真矢さんとシシドさんがツインドラムでビートを刻むという趣向だ。

   その後、調理と司会を担当するフリーアナウンサーの宮川俊二さんが、

「初心者のみなさんが失敗しがちな料理のポイントを、ドラムのリズムで支えていこうという番組です」

と説明し、番組は調理シーンへと進んでいった。

   この日のメニューは、ドレッシングから作るトマトサラダとカルボナーラスパゲティの二品。番組では、ドラムが刻む8ビートのリズムに合わせて野菜を切ったり、フライパンを振ったりしながら調理を進めていく。さらに料理のポイントの部分では、

「基本のドレッシング コツは8ビート」
「野菜はテンポを変えて切り分ける」
「むずかしい中火はリズムで感じよう」

といった解説テロップも表示された。どれも、その時叩いていたドラムのリズムに絡めて、料理のコツを「音楽的」に説明したものだ。

   なお、番組の公式ホームページには、この日作った料理のレシピと共に、真矢さんとシシドさんの「ドラムセット」の解説も掲載されている。

普通では絶対に採用されないような番組を実現

   こうした前例のない番組の内容に、テレビを見ていた視聴者からはツイッターに、

「何故ドラムを叩いている横で料理をするのか...意味がわからない」
「真面目に観ていいのか?斬新というか... 大丈夫か!?」
「シュールすぎてもはや意味がわからない」

との投稿が相次いだ。そのほか、「絶対ドラムは必要ないと思った」「めっちゃドラム使ってなんてことないサラダができた」など冷静なツッコミを送るユーザーも目立った。

   いったいなぜ、ドラム演奏と料理を同時に行う番組を放送しようと思ったのか。番組を企画したNHK大阪放送局制作部の伊藤雄介チーフプロデューサーはJ-CASTニュースの取材に、

「この『どらむでクッキング』は、普通では絶対に採用されないような番組を実現してしまおうというコンセプトで生まれた『おもラボ』という実験的な企画枠で放送しました。基になったアイデアは本当にシンプルで、『音楽番組と料理番組を融合させたら、番組として成立するのか』というものでした」

と説明する。この「おもラボ」では他にも、「人間の子供より猫の方が多いから、猫のための番組を作ろう」というアイデアで生まれた『ネコがみるみるテレビ』などを放送している。

   伊藤氏によれば、「どらむでクッキング」の撮影に当たっては、料理を担当した宮川アナが「本当にドラムのリズムに合わせて上手く料理を作れるのか」というドキュメンタリー的な要素も意識したという。ネット上で相次いでいる「意味が分からない」という指摘に対しては、

「何をやっているかがよく分からない番組の方が面白いのではないか、という点は狙っています。ですので、シュールといった意見が出ることはもとから想定していました」

と話す。

「テレビは今後どんな番組を放送していけばいいのか」

   ただ、伊藤さんが驚いたのは、視聴者からメールでの問い合わせがNHK大阪放送局へと相次いだことだった。「普段はこうしたメールでの意見って結構、批評的な内容のものが多いんですが...」として、次のように話す。

「今回のどらむでクッキングに対しては、『チョー笑った』『全然つまらない』とか感情的な意見が多かったんですよ。もちろん賛否は分かれていましたが(笑)。でも、こうした普段には無いような反応が出ることって、つまりは良くも悪くも視聴者の心に火をつける番組になれたんじゃないかと、そう好意的に受け止めています」

   伊藤さんはさらに、ネット限定で番組を制作・放送する媒体が次々と誕生している現状について、「第二の開局、と言っていいぐらい重要な時期だと考えています」。そうした意識のもと、「テレビは今後どんな番組を放送していけばいいのか」を改めて考え直す中で生まれたのが、

「作り手側が純粋に面白いと思ったものを視聴者に投げかけてみる」

という「おもラボ」の実験的な企画だったという。

   ただ、「どらむでクッキング」をはじめとした今回の企画番組に対しては、「NHKがやることなのか」「受信料の無駄遣いじゃないか」との批判も出ている。こうした批判について伊藤さんは「もちろん承知しています」とした上で、

「それでも、こうした新しい取り組みは続けて行きたいと、そう個人的には強く思っています」

と話している。

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