「助けてください...本日18時半からの団体29名様が連絡ないままキャンセルとなってしまいました...」――こんな悲痛な訴えが、ツイッターに投稿されたのは、2017年4月11日19時29分のこと。
投稿主は東京・秋葉原に店を構える居酒屋の公式アカウントだ。店側のSOSコールをうけ、ツイッターユーザーが「一致団結」。その後、事態は急展開を見せる。J-CASTニュースは今回、店主に取材し、当時の心境を聞いた。
「1日の売り上げがパーになるところでした」
「うちみたいな小さな店にとって、死活問題なんですよ。1日の売り上げがパーになるところでした」
居酒屋の店主はJ-CASTニュースの取材に、こう口を開く。店主によると、29名の団体客は2017年4月7日朝に予約の電話を入れてきた。飲み放題付きの3980円のコース(ネット限定、通常4480円)を選び、合わせて、500円ほどのコース料金値下げと日本酒持ち込みを要求したという。
店内は40席ほどで、29名の団体客が来店すればほぼ満席となる。それでも店主は要求に応じ、コース内容を調整。席も1日がかりで確保したという。
しかし、予約当日の4月11日、団体客はついに現れなかった。予約時間の30分後に電話をかけたものの、つながらず、途方に暮れてしまったという。
食材を用意し、すぐに料理が提供できるところまで準備していた。このままでは用意していた食材を廃棄しなければならない――。絶望の中、ツイッターにこう書き込んだ。
「助けてください...本日18時半からの団体29名様が連絡ないままキャンセルとなってしまいました...もうコース料理も全部ご用意している状態でこのままだと...お料理のみコース、2000円で飲み放題付き3000円でお立ち寄りいただける方いらっしゃいませんでしょうか...」
すると、ツイートを見た人が続々と来店、準備していた料理がすべて売り切れたという。店主は
「ツイートした直後から、対応しきれないくらい多くのお客様にご来店いただけました。常連さんも何度かリツイートしていただいたようです。正直、涙が出るくらい感動しました」
と振り返る。なお、その日の収支は「何とか人件費分は出るくらい、トントンになった」らしい。
キャンセル料は「あくまで抑止力」
予約を入れた後、店側に連絡せず一方的に予約をキャンセルする行為は俗に「バックレ」と呼ばれる。歓送迎会や忘年会が集中する繁忙期、この店では月に2~3件ほどバックレが発生しているらしい。
「店によっては、もっと多いと思います。居酒屋なら、連絡せずキャンセルすることに罪悪感を覚える方が少ないのでしょうか...。いずれにしても、モラルのない一部の方によってこのような行為が繰り返されるのは悲しいことです」
たとえ5万円、10万円の売り上げ減でも、店にとっては大損害だ。バックレは行為の「気軽さ」と対照的に、店側に深刻な被害をもたらす。店主は、
「せめて連絡はしてほしいと思います。連絡をいただければ、こちらも対応できるので」
と訴える。
「電話くらいはしてほしい」。そうした思いから、この店はキャンセル料を一切取っていないという。店主は取材の最後、
「私たちにとって、一組一組のお客様が特別です。もしキャンセル料を取り、(宴会の)幹事様だけが損をこうむったらとしたら、こちらも嫌な気持ちになります。キャンセル料はあくまで『抑止力』であって、回収自体が目的ではないのです」
と記者に話した。