米国と北朝鮮間の緊張が高まる中、韓国政府が「4月危機説」の打ち消しに躍起になっている。2017年4月10日頃から「4月27日に米国が北朝鮮を攻撃する」といった書き込みが韓国のSNSで拡散されており、外務省と国防省の報道官が相次いで「根拠がない」「惑わされないように」などと注意を呼びかけた。
ただ、ここ半月ほどで北朝鮮では複数の大規模イベントが控えており、6回目の核実験を強行するとの見方もある。その場合は米国が新たな対応に踏み切る可能性もあり、「危機説」が「デマ」かどうかは微妙なところだ。
「金正恩が亡命する」説も...
韓国のネット上で広がっているのは、米国が北朝鮮を攻撃したり、「金正恩朝鮮労働党委員長が亡命する」といった内容。米国が原子力空母カールビンソンを朝鮮半島に近い西太平洋に向かわせたり、ティラーソン国務長官が北朝鮮について「他国の脅威になったりした場合、ある時点で何らかの反応をすることになる」と警告したりしたことから、書き込みが信ぴょう性をもって受け止められているようだ。
複数の韓国メディアによると、こういった状況に対して、外務省の趙俊赫(チョ・ジュンヒョク)報道官は4月11日の記者会見で、
「『4月朝鮮半島危機説』には根拠がない」
と主張。
「米国は、問題の直接の当事者である私たちとの協議なしにいかなる新しい政策や措置も行わないことを明らかにしている」
として、仮に米国が北朝鮮を攻撃する場合は、韓国との事前協議が行われると説明した。
国防省の文尚均(ムン・サンギュン)報道官も同日の会見で、
「最近、SNSなどで流布されている朝鮮半島の安保状況の誇張された評価について惑わされないように注意が必要だ」
と強調。北朝鮮への対応について、
「(米韓で)すべての分野で緊密な連携が行われるだろう」
と述べた。
核実験強行で「(米国)本土攻撃の懸念が上昇」
だが、「危機説」が完全に「デマ」かどうかは議論がありそうだ。北朝鮮では、4月15日に金日成主席の105回目の誕生日「太陽節」、4月25日に人民軍創建日を迎える。北朝鮮による過去5回の核実験で4月に行われたものはないが、いずれも大きな行事の「節目」に核実験が行われており、今回も強行する可能性がある。韓国の通信社「ニュース1」では、核実験の強行は
「大陸間弾道ミサイル(ICBM)に搭載する『核弾頭の小型化』の時期が遠くないことを誇示することになる」
として、
「(米国)本土攻撃の懸念が上昇し、米国政府の対応を触発させる可能性が高くなる」
と指摘している。
実際に米国も強硬姿勢を崩していない。トランプ大統領は4月11日(米東部時間)、ツイッターに
「北朝鮮は自ら面倒を招こうとしている。中国が協力することを決めるのであれば、それは良いことだ。そうでないならば、彼ら抜きで我々が問題を解決する」
と書き込んだ。スパイサー報道官は同日の記者会見で、ツイートの「問題を解決する」の意味を問われ、
「北朝鮮による行動のいくつかは容認しないということを明確にした」
「全ての選択肢はテーブルの上に置いたままだと思う」
と答え、先制攻撃に含みを残した。