浅田真央(26)のフィギュアスケート現役引退は、日本だけでなく韓国メディアでも大きく報じられている。
目立つのは、ライバルとして扱われてきたキム・ヨナ(26)との比較で、いくつかのメディアが「キム・ヨナの壁を超えられなかった」と断じている。
「キム・ヨナを超えられなかった悲運のスケーター」
浅田は2017年4月10日夜にブログで「フィギュアスケート選手として終える決断を致しました」と発表。11日には各韓国メディアでも報道された。同日付「中央日報」では、「浅田は、ジュニア時代からキム・ヨナと激しい競争をしてきた」と2人を並べながらも、「シニアではキム・ヨナの壁を超えることができなかった」などと比較した。
より強調したのは11日付韓国メディア「inews24」で、「『強心臓』キム・ヨナの前では、浅田はいつも気が引けた」「(ソチ五輪は)キム・ヨナが銀メダルで有終の美を収めたが、浅田は6位でノーメダルの痛みを経験した」とした上で、「キム・ヨナという『大きな山』を超えられなかった悲運のスケーター」などと表現していた。
確かに2人はジュニア時代から約10年間、女子フィギュアスケート界を引っ張ってきたライバルだった。
主要国際大会での2人の対戦成績を見てみると、ジュニア時代(04~06年)は浅田の2勝1敗。
シニアでは、10年バンクーバー五輪直前までに浅田が3勝5敗とキムがリード。同五輪ではキムが金メダル、浅田は銀メダル。ただ、浅田は女子史上初となるショート・フリー合わせてトリプルアクセルを3回成功させる快挙を成し遂げた。直後の世界選手権では浅田が優勝、キムが2位だった。
「功績を否定するようなことはしないでほしい」
最後の対戦となった14年ソチ五輪ではキム2位、浅田6位。しかし、浅田は順位は下だったものの、フリーでは全6種類のトリプルジャンプを計8回組み込んだ前人未到のプログラムを完璧に演技し、世界中から賞賛された。キムはこの五輪を最後に現役引退したため、2人の対戦はジュニア時代を含めて浅田の6勝、キムの10勝で終わっている。数字のうえではキムが優っているものの、2人はそろって高い順位に立ち続け、長年に渡って切磋琢磨しながらフィギュアスケート界を引っ張ってきた。
ただ、世界選手権やグランプリファイナルはともに優勝経験があったものの、五輪ではキムだけが金メダルを獲得、浅田は銀が最高だった。
キムが引退した同じ年に、浅田は1年の休養宣言をした。浅田にとっては、五輪での優勝へのこだわりがあったようだ。しかし、ケガもあり、持ち前のジャンプが思うようにとべなくなっていた。今回、引退を決意した背景には、来年の平昌五輪への日本の出場枠が3枠から2枠へ減ったことが影響したとの見方も出ている。
それにしても、浅田、キムは一時期フィギュアスケート界を飛躍させたのは間違いなく、韓国でも浅田の人気は高かった。前出のような韓国メディアの報道にも、韓国人ツイッターユーザーからさまざまな声がでているが、次のような疑問の声も出ていた。
「韓国メディアはこんな不快な考え方をしないでほしい」
「1人の人間が人生をかけてきた競技から離れようとしている。キム・ヨナも、浅田真央も素晴らしい選手だった。その功績を否定するようなことはしないでほしい」