【美と若さの新常識~カラダのヒミツ スプーン1杯の魔法 食べるアブラの極意】(NHKBSプレミアム)2017年4月6日放送
アブラは高カロリー。だからダイエットの大敵とされてきた。しかし、いまや「アブラは種類を選んで食べろ」が新常識。米国の食事ガイダンスでは20年前、「すべてのアブラを控えるべき」とされていたが、現在、「魚や植物のアブラは積極的にとるべき」に変わっている。
中でも注目されているのが、「オメガ3(スリー)」。新陳代謝を促し、中性脂肪を抑え、ダイエット効果があり、美肌にもいいという。食べるアブラの極意を紹介する。
いい脂肪はカロリーがあってもとった方がいい
番組には、3人の「アブラの専門家」が登場した。メタボリック・シンドローム(代謝異常症候群)研究の第一人者、伊藤裕・慶応大学名誉教授。どの食べ物が脂肪の代謝に優れているかに詳しい河田照雄・京都大学教授。脳と体に効く油を研究している守口徹・麻布大学教授だ。
MCのお笑い芸人フットボールアワーの岩尾望がこう言った。
MCの岩尾「アブラって太るものでしょう。何ですか、今日の企画。アブラを食べれば、どんどんやせられるなんて。話半分に聞いた方がいいかもしれません」
ゲストの女優・高橋ひとみが「フフフ」と笑いながらこう言った。
高橋ひとみ「でも、私が一番やせた時、アブラ抜きダイエットをしたら、もう髪がバッサバサのひどい状態になりました」
まず、伊藤名誉教授がアブラの重要性をこう説明した。
伊藤名誉教授「アブラ、つまり脂肪を一律に悪いというのではなく、いい脂肪、悪い脂肪という考え方が出ています。いい脂肪はカロリーがあってもとった方がいいのです」
河田教授「私は、脂肪を友だちだと思っているくらいです。『Fried of Adipose Tissue』(フレンド・オブ・アディポス・ティッシュ)をモットーにしています。アディポス・ティッシュは体脂肪の意味です。わが友、体脂肪よ(笑)」
番組ではここで「油」の種類をおさらいした。油には次の4種類がある。
(1)飽和脂肪酸:ラードのように常温で固形になる油。バターや牛肉に多い。
(2)オメガ9(ナイン):常温で液体になる油。オリーブオイルや鶏肉、豚肉に多い油。
(3)オメガ6(シックス):常温で液体になる油。コーン油や大豆油、サラダ油など植物性に多い。
(4)オメガ3(スリー):常温で液体になる油。アマニ油、エゴマ油、青魚などの魚油。チアシード油など。
オメガ3を食べたマウスは高カロリーなのにやせた
これらの油はみな、1グラムあたりのカロリー量が9キロカロリーで同じだ。このうち飽和脂肪酸とオメガ9は体の中で作ることができるが、オメガ69とオメガ3は体内で作ることができないので、食べないといけない。
河田教授「サラダ油などのオメガ6は、調理でよく使われるので過剰摂取気味です。ところが、オメガ3は魚からとるのが一番いいのですが、最近、日本人は魚を食べなくなったので、1日に必要なは摂取量の2割から6割くらいまでしかとっていません、今、日本人に一番必要なアブラです」
オメガ3にはダイエット効果がある。河田教授は成長期のマウスを2つのグループに分け、それぞれエサに同じ量の豚のラード(飽和脂肪酸)と、オメガ3(エマニ油)を加えて与えた。両方とも普通のエサより油の分だけカロリーが高い。10週間後に体重を測ると、飽和脂肪酸を与えたマウスは、普通のエサを食べたマウスより20%体重が増えた。しかし、オメガ3を食べたマウスは逆に普通のエサを食べたマウスより、15%も体重が減っていた。なぜ、こんな効果があるかは、おいおい説明しよう。
さて、こんな効果が人間にもあるのだろうか。MCのフットボールアワーの後藤輝基が自信たっぷりにこう言った。
MCの後藤「これから『スプーン1杯の魔法』をお見せしましょう」
番組では「おデブちゃん」お笑い芸人、ニッチェの近藤くみこに1か月間、毎日スプーン1杯のオメガ3(アマニ油)を食べてもらった。近藤は「カロリーとか一切気にしたことがない。外食ばっかり好きなものを食べたいだけ食べる」と公言する人。1か月間、そのままスプーンで飲んだり、ポテトチップスやアイスクリーム、餃子にかけたり、カレーライスやスパゲティーに注いだりした。それらの映像を見て、高橋ひとみが呆れた。
暴食1か月でもウエスト5センチ減、体重2.6キロ減
高橋ひとみ「信じられない。本当にひどい食生活」
実験前に、近藤は病院で体重や体脂肪、血液の検査をした。体脂肪の面積(腹囲の断面)は135平方センチメートル。同年代の女性の約3倍だ。中性脂肪は189ミリグラム(正常値は30~149ミリグラム)。体重は69.5キロ、ウエストは...公表しなかった。それが、いつもどおりの不摂生を続けた1か月後......。
MCの後藤「パンパカパーン! 衝撃の結果を発表します! 体重マイナス2.6キロ。ウエスト、何とマイナス5センチ。中性脂肪マイナス24ミリグラム。体脂肪の面積マイナス4.4平方センチメートル!」
近藤の相方のお笑い芸人、ニッチェの江上敬子が叫んだ。
江上敬子「マジで~?! この人、毎日大の字で寝ていたよ~」
近藤くみこ「(ドヤ顔で)ワ~、ハッハハハハ」
MCの後藤「オメガ3を食べてどうだったの? 何か変わったことは?」
近藤くみこ「信じられないくらい便が出ます。もう、根こそぎ持っていかれる感じです」
伊藤名誉教授「オメガ3は体の炎症を抑えますから、荒れていた腸の状態を整え、腸の壁の中からいい腸内細菌が出てくるようになったのです。腸内細菌がいい状態になると代謝がよくなるから便がいっぱい出るようになります」
近藤くみこ「正直、最初は疑っていました。だって、あの食生活だから」
守口教授「毎日少しずつ続けることが大事なのです。効果があるといってスプーン何杯も食べてはダメ。カロリー過剰で効果が台無しになります」
ここでMCの後藤がオメガ3の2番目の特徴をパネルで見せた。
MCの後藤「それは『体にスイッチを入れる』ことです」
オメガ3には他の油にないスゴイ特性がある。番組では冷凍施設のある工場の協力を得て、零下35度の極寒の冷凍庫の中に、オメガ3(アマニ油)、オメガ6(コーン油)、オメガ9(オリーブ油)、飽和脂肪酸(バター油)の4つの油を1時間入れた。すると、他の油はみなカチンカチンに凍ったが、オメガ3だけが液体のままだった。凍らないのだ。北極海の厳しい寒さの中に生きるアザラシやアシカの体にはオメガ3が詰まっている。オメガ3は体温をあげる働きがある。オメガ3にダイエット効果がある仕組みを、伊藤名誉教授と河田教授がこう説明した。
伊藤名誉教授「オメガ3は消化器官に吸収されると、細胞の中にある体温を上げるスイッチをオンにします。すると、脳から体温調節細胞に指令が行き、体中が活性化され体がポカポカ温かくなります。つまりエネルギー(脂肪)がどんどん燃やされて熱になるから、ダイエット効果があるのです」
河田教授「私たちは食べ物を消化吸収して体を作りますが、その時に酵素が働きます。酵素は体温が高めの時の方がより働きやすくなります。体温が上がった方が新陳代謝は活発になるのです。また、余った栄養分は肝臓に運ばれて中性脂肪として蓄えられますが、オメガ3が肝臓にあると、中性脂肪を余分に作るのを阻止してくれるのです。また、オメガ3は血管を広げる力を持っていますから血流がよくなります」
美肌のヒミツは肌の毛細血管の血流がよくなるから
MCの後藤「いいことづくめじゃないですか」
近藤くみこ「オメガ3を飲んでいた1か月、花粉症の時期だったのに、肌が全く荒れませんでした」
河田教授「肌の毛細血管の血流がよくなったから、栄養分を肌のすみずみまで運んでくれたからでしょう。肌荒れの原因の多くが毛細血管の詰まりです」
ここで、守口教授が大学研究室で行なったマウスの実験の映像が公開された。2つのグループのマウスにオメガ3を含んだエサと、まったく含まないエサを与えて育て、生後7週間(人間の20歳くらい)で肌を比較した。拡大写真を見ると、オメガ3を食べたマウスの肌はピンク色でツヤツヤしているが、オメガ3が欠損したマウスは血色が悪く、老婆のようにしわが多い。
高橋ひとみ「ショックです。こんなに違うんですか。明日からオメガ3を毎日食べます。女優は肌が命ですから(笑)」
MCの後藤「(後藤くみこに)花粉症はどうだったの?」
近藤くみこ「そういえば、今年は超~楽でした。まったく辛くなかった」
河田教授「それは、オメガ3がある程度、炎症をおさえてくれたからです」
近藤くみこ「わたし、絶対にオメガ3と結婚します!(スタジオ中爆笑)」
ところで、オメガ3はどうやって食べればいいのだろうか。油自体は無味無臭だから、どんな料理にかけても合う。
守口教授「オメガ3は青魚など本来、魚でとることが一番効率がいいです。エゴマ油やアマニ油は最近登場した珍しい油で、魚なら安く食べられます。アジ1匹100グラム程度で、1日に必要な量をとることができます」
番組では、超簡単な「『缶』単レシピ」を紹介した。サバの缶詰を使うのだ。サバ好きの人々や業界団体の集まり「全日本サバ連合会」の代表で食ジャーナリストの池田陽子さんが「サバ缶のふわふわツクネ」などを教えてくれた。
(1)材料:サバの水煮缶1個。ハンペン1個。つなぎの卵1個。お好みの薬味(刻みネギなど)
(2)ビニール袋の中にハンペン、缶詰の身(サバ)、卵を入れて、外側からよくもんでこねる。
(3)(2)にお好みの薬味を入れ、手で丸めてツクネを作る。
(4)(3)をフライパンで両面を焼く(ハンペンもサバも火が通っているので軽く焼く程度)。
(5)ソースは、レモンとケチャップ、あるいはエスニック風にするなら、ホットペッパーソースなど。