2017年2月23日に警察庁から昨年発生した交通事故の状況などを分析した調査報告「平成28年における交通死亡事故について」が発表された。
報告では全国の死者数が3904人で67年ぶりに3000人台にまで減少した。乗車中の死者数は運転席、助手席共に大幅な減少傾向にあるとする一方、後部座席の死者数が横ばいだと指摘。これを受けて「後部座席は安全ではない」とする報道も見られたが、実際はどうなのか。
座席別致死率では後部座席が最も高い
同報告によると、2016年の自動車座席別に見た死者数は運転席が1004人、助手席が155人、後部座席が179人となっている。人数は運転席が多いのは当然として過去10年間の死者数の推移を見ると、2006年を100とした場合の死者数指数では運転席が55、助手席が43と半減しているのに対し、後部座席は86と微減にとどまっている。これ以前も最も少なかったのが2015年の74なので、10年間で後部座席の死者数はあまり減少していない。
後部座席の死者数がなかなか減少していない理由について、警察庁は報告の中で「後部座席等は運転席や助手席と比べて(シートベルト)非着用の割合が高い」と指摘。後部座席等の未着用が57%、運転席41%、助手席27%となっている。道路交通法上は後部座席を含む全席シートベルト着用が義務化されているが、後部座席未着用に違反金はなく、違反点数も高速道路上で未着用が確認された場合のみとなっているためだろう。
とはいえ、運転席や助手席の死傷者数はもともと分母が大きいはずで指数の比較だけでは安全かどうかは判断できない。J-CASTヘルスケアが警察庁に取材したところ「座席位置別致死率」の数値を入手した。致死率は各座席の死者数を死傷者数で割って算出している。
これによると運転席は0.32、助手席は0.27、後部座席は0.36となっており、確かに後部座席の致死率が運転席を超えている。この後部座席にはバスの座席やバス内で立っていた人などは含まれておらず、乗用車の後部座席の死者数をもとに算出しているという。ただし、後部座席だけが抜きんでているというわけでもなさそうだ。