インターネット通販が急増する中、宅配便ドライバーらの人手不足が深刻化している。ドライバーらの長時間労働はまん延しており、最大手のヤマト運輸は配達指定時間を一部廃止するなど、負担軽減策に乗り出した。ただ、ドライバーらの厳しい労働環境の一端には消費者側の責任もあるとの指摘も出ている。
ヤマト運輸の長時間労働や時間外給与不払い問題で注目されたように、ドライバー不足の最大の要因は、ネット通販の増加だ。実際、宅配便総数は2015年度に37億個を超え、この20年間で3倍、この10年間では約8億個も増えている。中でもヤマトは2013年にネット通販大手、アマゾンジャパンと契約して以降、取り扱う荷物の個数が増加。2015年度の取り扱い個数は17億3000万個と過去最高を記録し、2016年度も19億個に迫った模様だ。
年間約9万人が再配達のために使われている
ネット通販市場は急拡大しており、今後も伸び続ける可能性が高い。ある物流関係者は「ドライバー不足は、ネット通販の拡大自体が悪いのではなく、拡大することを見据えた対応が遅れたことが大きな原因。そして『再配達』などドライバーの負担になるサービスの改革ができず、人手不足をいっそう深刻にしてしまったといえる」と分析する。
多くの物流関係者は再配達こそ重大な問題なのだと指摘する。国土交通省の調査では、約2割の荷物が再配達されていて、年間約9万人が再配達のために使われているという。そんな無駄な事態を招いているのは、「再配達が無料で提供されているためで、それが消費者のモラル低下を引き起こしている」(別の物流関係者)とされる。国交省によると、再配達の4割が「再配達してもらうのを前提に不在にしていた」と回答したという。ドライバーらによれば、不在連絡票さえ見ない人は少なくないうえ、指定された時間に再配達しても不在である場合もあるそうだ。このために何度も何度も足を運ばなければいけない。ある流通関係者は「今ある便利さは、宅配ドライバーらの重労働という犠牲の上に築かれていることを考えた方がいい」と、消費者の意識改革の必要を指摘する。