大きく裂けた口からは鋭い歯が飛び出し、くすんだ黒色の長髪の下からは大きなギョロ目がのぞく。赤黒くザラついた体には、筋肉のような「不気味」な模様が浮かんでいて――
こんな「ホラー過ぎる」見た目の兵庫県福崎町の公認キャラクター「ガジロウ」が、いまネット上を騒然とさせている。活動が報じられる度に「大人でも怖い」「トラウマになる」との悲鳴が飛び交うこのキャラ、一体どんな経緯で生まれたのか。「生みの親」である福崎町の担当者に聞いた。
「あえて滅茶苦茶気持ち悪いキャラクターを」
「遠野物語」「妖怪談義」などの著作で知られる民俗学者・柳田国男(1875~1962年)の出身地である福崎町は、2013年から妖怪を使った町おこしに力を入れている。カッパをモチーフにした「ガジロウ」も、その一環で誕生したキャラクターだ。
そんなガジロウは、一般的にイメージされる緑色のかわいらしい「カッパ像」とはかけ離れた、赤黒く不気味な見た目が特徴だ。頭の上にある皿の周りからは、人毛と良く似た質感の長髪が垂れている。
いったいなぜ、こうした気味の悪いキャラクターを作り出したのか。ガジロウのデザインを考案した福崎町地域振興課の小川知男課長補佐は17年4月10日のJ-CASTニュースの取材に、
「ガジロウというキャラが生まれたのは2014年で、この時はもうすでに各地で色々なゆるキャラが濫立していたんです。そこで、あえて滅茶苦茶気持ち悪いキャラクターを作り出してやろう、そう考えたんですよね」
と笑いながら話す。
もともとガジロウは、柳田の生家がある「辻川山公園」(福崎町西田原)の池に設置する像として生まれたキャラクターだった。池の中にカッパの像を置くことになったそもそもの理由について、小川さんは、
「前町長の嶋田(正義)さんに、『辻川山公園の池の水が全然綺麗にならないから、逆手を取ってカッパでも出したらどうだ』と冗談交じりに提案されたのがきっかけです(笑)」
と説明する。
定期的に池から飛び出してくる仕掛けを施したこのガジロウ像が、当初の予想を上回る人気を集めたことから、その後15年秋になって着ぐるみ化。その製作にあたって小川さんは、特撮作品の「怪人」を担当したこともある本職の造形士に、
「池の像よりももっと怖く、リアルに作ってくれ」
と依頼したという。
「なまはげに近いイメージですかね」
そんなガジロウの「怖すぎる見た目」がネット上で大きな注目を集めたのは、4月8日に福崎町内の公園で行われたイベントがきっかけだ。このイベントに登場したガジロウの着ぐるみを見て号泣する子供の姿が、翌9日の朝日新聞(ウェブ版)で写真付きで報じられたのだ。
「かっぱカレー食べて PRキャラ『怖い』と泣き出す子」と題したこの朝日記事を受けて、ツイッターやネット掲示板には、
「怖いって言うか気持ち悪い」
「こんなの大人でも泣くわ」
「小さい頃に出会ったらトラウマレベル」
といった「悲鳴」のような書き込みが殺到。なかには、「もっとデフォルメできなかったのか」と要求するような投稿も出ていた。
ただ、先述の小川さんによれば、ガジロウを見た子供が泣き出すのは「日常茶飯事です」。着ぐるみが出演するイベントでは、わざと子供を怖がらせたりするような動きをすることが多いとして、
「なまはげに近いイメージですかね。親御さんも面白がって、わざとガジロウの近くに子供を連れてきたりしていますよ」
と話す。
とはいえ、こうしたガジロウの活動について、福崎町役場には「見た目が気持ち悪すぎる」「あんなものを外に出すな」といった苦情も届いているという。ただ、小川さんは「圧倒的に応援する声の方が多いので、(反対意見は)あまり気にはしていないです」とも話していた。
ちなみに、ガジロウは16年のゆるキャラグランプリに出演したが、順位は全1421体中で871位にとどまった。こうした結果について小川さんは、
「ガジロウは17年大会にもエントリー予定です。こうした大会を通じて、ガジロウの悪名をさらに全国に広げていきたい」
と意気込んでいた。