「今日からは はぐれ川柳 パピプペポ」――。五・七・五の最後の5文字を「パピプペポ」とする斬新な形式の川柳が、ツイッターを中心にじわりと人気を広げている。
ふとした思いつきや日常のささやかな出来事を、五・七の12文字でまとめるこの「パピプペポ川柳」。考案者によれば、俳句や川柳にどこか「敷居の高さ」を感じてしまう人でも、自由気ままに詠める点が最大の特徴だという。
「パパピンチ パンツにペリカン パピプペポ」
「パピプペポ川柳」とは、具体的にどんな川柳なのだろうか。実際にツイッターに寄せられている作品を見てみると、
「同窓会 あら、あれ、あれれ? パピプペポ」
「すっぽんぽん バスタブお湯なし パピプペポ」
「Gジャンの いかす爺ちゃん パピプペポ」
「ペンギンの アッパーカット パピプペポ」
といった具合だ。これらの川柳はいずれも、「パピプペポ川柳運営事務局」が毎週ツイッター上で開催しているコンテストで入選している。
2017年4月4日のJ-CASTニュースの取材に応じた、パピプペポ川柳運営事務局の宍戸秀光さんによれば、ツイッター上で川柳を募集し始めたのは15年9月から。当初から週に200句ほどの投稿があったが、17年4月現在では多いときには週あたり1500句が寄せられるほどになったという。
16年12月には投稿をまとめた書籍『パピプペポ川柳傑作選』を発売した。刊行直後には通販サイト「Amazon(アマゾン)」の句集カテゴリでランキングの1位に立つほどの反響を集めたという。宍戸さんはこうした動きに確かな手応えを感じているとした上で、
「これからも『パピプペポ川柳』を普及する活動を続け、もっと多くの人に知って頂けるよう努力します。この新しい川柳をきっかけに、みなさんが日本語の良さを再認識していただければ嬉しいですね」
と話していた。
宍戸さんは、毎週実施しているコンテストの選評にも関わっている。これまでに数万本の「パピプペポ川柳」に接してきた宍戸さんに、特に印象に残っているものを聞くと、次の一句を挙げた。
「パパピンチ パンツにペリカン パピプペポ」
この句を選んだ理由については、「正直意味が分かりません。でも、詠んでみるとリズムが気持ち良い。こうした句が、パピプペポ川柳の『真骨頂』ではないでしょうか」としていた。
「日本語の面白さを気軽に再発見できる遊び」
このパピプペポ川柳はそもそも、元『週刊プロレス』編集長でライターのターザン山本さんが考案したものだ。ターザンさんはJ-CASTニュースの取材に、こうした常識破りのスタイルの川柳を考えついた理由について、次のように語る。
「もともと俳句が好きだったんです。松尾芭蕉とか与謝蕪村とか。でも、いざ俳句の五・七・五を考えるとなかなか難しい。そう思って、前からツイッターで下の句をアイウエオとかカキクケコとか適当に変えた川柳を投稿していました」
そんなターザンさんの活動に目をつけたのが先述の宍戸さんだ。2人の雑談の中で「これ、色んな人に広めたらおもしろいんじゃない」という話が出て、そこからツイッター上でのコンテスト開催に至ったという。
パピプペポ川柳が持つ独特の魅力についてターザンさんは、芭蕉の句を引用する形で、
「『古池や蛙飛びこむ池の音』じゃ何か結論が出すぎていると思います。『古池や蛙飛びこむパピプペポ』にすれば、より想像力が膨らんで面白い気がしません?」
と実例を挙げて記者に逆質問。何と返していいか分からず返答に詰まる記者に対し、ターザンさんは続けて、
「パピプペポ川柳は自由に使える文字が少ないから、どうしても論理的な説明や結論は出せない。その『言い切れない』部分に、受け取る人の想像力が広がる余地があって面白いと思うんです。あと、詠み手も句の意味なんて二の次で、自由に詠むことができますから」
といかにも楽しげに魅力を力説。続けて、「おカタい芸術の世界に『パピプペポ』というおかしなフレーズを入れることで、俳句や川柳がより身近なものになるのでは、そんな狙いもあります」とも説明した。
なお、アイウエオやカキクケコではなく、下の句を「パピプペポ」にした理由について聞くと「半濁音の方がなんか軽い感じでいいかなと思って」。今後の展開については、
「とにかく、この面白い遊びを皆さんにも広めたい。パピプペポ川柳って、気持ちのいい言葉のリズムを考えたり韻を踏んでみたりと、日本語の面白さを気軽に再発見できる遊びだと思うんです。だから、もっと色々な人にこの魅力を知ってもらいたい、そう考えています」
と話していた。