待機児童問題が一向に前に進まない。政府は2017年度末までに待機児童を解消するという目標を掲げてきたが、安倍晋三首相が「非常に厳しい状況」とみとめ(2月17日)、早々に白旗を上げてしまった。「過少計上」の自治体があると指摘される待機児童の「定義」の統一も2018年度に先送りされた。政府は6月に新プランを策定する考えだが、受け皿拡大や新たな対策に必要な財源をいかに確保するかの見通しもたっていない。
現行の「待機児童解消加速化プラン」は、2017年度末の待機児童解消に向け、2013~17年度に保育の受け入れ枠を50万人分確保、そのために保育士数を5年間で約9万人分確保する目標を掲げた。実績を見ると、2013~15年度に保育受け入れ枠31.4万人分を確保済みで、2016年9月時点では残る2年間でさらに18.6万人分以上増えると見込み、50万人は達成できるとしている。
2017年度末の待機児童解消は「困難に」
ただ、厚生労働省のまとめによると、2016年4月時点の待機児童は2万3553人と、2年連続で増加、さらに同10月1日時点では4万7738人と、1年前より2423人多く、2年連続での増加になった(10月は年度途中に育児休業が明けるなどのため4月の2倍くらいになるのが例年の傾向)。
このため、安倍首相自ら、2017年度末の待機児童解消が困難になったと表明せざるをえなくなった。働く女性の増加で保育を利用する人が想定以上に増加したと、政府は釈明する。逆に言えば、政府の想定が甘かったということになる。
そもそも、待機児童については、定義さえ統一されていないという大問題がある。J-CASTニュースも2016年9月20日の「表面化した『隠れ待機児童』数 それでも実態が不透明なワケ」で詳述したように、例えば、親が自宅で休職中や育休を延長したケースを待機児童に含める自治体と、含めない自治体があるなど、実態さえ十分につかめていない。厚労省の数字も、正確に実態を反映していないことになる。
さすがに厚労省も拙いと判断し、定義を統一するための有識者と自治体関係者の検討会を2016年9月に発足させた。2017年3月中に新基準を設け、2017年4月時点の集計から適用する考えだったが、1年先送りされた。