日本で一番人気のある寿司ネタは「サーモン」なのか――。水産食品メーカーのマルハニチロが毎年春に実施しているアンケート調査の2017年版で、回転寿司における「サーモン人気」が改めて浮き彫りになった。
17年版の調査結果では、「回転寿司店でよく食べているネタは」という質問に対し、半数近くの46.3%が「サーモン」と回答。2位の「マグロ」(34.2%)に大きな差をつけ、ダントツの首位に立った。この質問で「サーモン」が1位になるのは、6年連続6回目のことだ。
「安いところでも味が安定している」
マルハニチロが3月28日に発表した「回転寿司に関する消費者の実態調査」(17年版)。月に1度以上回転寿司店を利用する全国の男女1000人が対象で、ネット上でアンケートを実施している。この調査形式は、2010年の調査開始から7回連続(11年のみ実施なし)で同じだ。
同社の調査における「サーモン人気」は圧倒的だ。12年の調査から聞き始めた「よく食べているネタは」(複数回答可)という質問では、サーモンが6年連続で他の寿司ネタを大きく引き離して1位になっている。
最新17年版の結果を詳しくみると、サーモンを「よく食べている」と回答した人は男性で40.2%、女性で52.4%。「最初に食べることが多いネタは」という質問に対しても、サーモンが20.8%でトップ。さらには「最後に食べることが多いネタ」の質問でも、1位はサーモン(10.8%)だった。
このように、他を寄せ付けない「不動のサーモン人気」を改めて浮き彫りにした今回のマルハニチロ調査。だが、あくまでこれは「回転寿司」について聞いたもの。実際、ツイッターやネット掲示板には、
「回転寿司ならサーモン。お寿司屋さんでたべるならコハダ、サバ、アジ、エンガワ」
「回転寿司ならサーモンだけど、回んない寿司屋なら...」
「安い回転寿しだったらサーモンは割と安定してるネタ」
といった声も出ている。つまりは、回転寿司限定でなら「サーモン」が人気だろうが、値段の張る専門店を含めれば「他のネタの方が好まれるのでは」といった見方だ。
サーモン人気の理由を寿司職人に質問すると...
一方で、サーモンの人気が高いのは、回転寿司「限定」ではない事をうかがわせる調査結果もある。
持ち帰りすしチェーンで知られる「京樽」が16年10月に結果を発表したウェブアンケート調査では、全国の男女1000人に「江戸前寿司で好きなネタ」(複数回答可)を質問。この結果でも、1位は46.6%の支持を集めた「サーモン」だった。
こうしたサーモン人気の要因について、寿司の歴史や食べ方などに詳しい職人養成学校の関係者に見解を尋ねた。J-CASTニュースの17年4月6日の取材に応じたこの関係者は、「回転寿司や宅配寿司チェーンの台頭が大きいでしょう」と述べた上で、次のように分析する。
「サーモンの人気を集めている理由は、大きく分けて三つあると思います。まずは価格が手頃なこと。二つ目は、炙ったりマヨネーズをかけたりという調理法や味付けが、若者の味覚にマッチしたこと。最後に、仕入れが容易で、大規模なチェーンでもネタを扱いやすいことも理由の一つでしょう」
ただ、この関係者は「本格的な寿司店では、サーモンを置いていない店も多いでしょう」とも指摘。その理由は、もともと江戸前寿司には存在しなかったサーモンというネタを、寿司の伝統を重んじて「扱わない」職人が多いためだという。
では、そうした職人たちは昨今の「サーモン人気」についてどう見ているのか。サーモンを一切扱わないという東京・下北沢の寿司店「福元」の職人の男性は取材に、
「いまの若い子とかは、油さえのってればいいと考えてしまうんじゃないかな。しかも、サーモンならどんなに鮮度が悪くても炙ってマヨネーズとかレモンをかければ分からないでしょ。そうなると、店側も安く出せるよね」
とサーモンが人気を集めている要因を分析。続けて、最近では職人が握る本格的な寿司店でもサーモンを扱うところが増えているとして、次のように話していた。
「商売を考えたら、サーモンを置かざるを得ないんでしょう。でも、僕は絶対に嫌だな。サーモンを扱い始めた職人には『何をやってるんだ!』と言いたい気持ちですよ」