「撤回する、ということで理解していただいて結構です」――2017年4月7日午前、記者会見に臨んだ今村雅弘復興相は、記者からの質問に渋い顔で答えた。東日本大震災での東電福島第1原発の事故による放射能汚染からの「自主避難」者への支援についての4日の記者会見で、質問した記者に「ブチ切れ」たのみならず、自主避難者の行為は「自己責任」である、と取られる発言が問題視され、当初は発言撤回を拒否していたが、発言から3日たって、兜を脱いだ形だ。
発言撤回でも批判は収まらず、野党のほか、被災者支援団体などからは「辞任」を求める動きが相次ぐ一方、ネット上の一部では、復興相への同情論も散見される。
「発言の撤回と謝罪、そして復興大臣を辞任することを求めます」
「避難者を苦しめる今村大臣は辞任をしろー!」「避難の権利を認めろー!」――7日夕方、東京・霞ヶ関の復興庁前にシュプレヒコールが響いた。
この日、先だって行われた午前の会見で今村復興相は、問題となった「自己責任」発言について、「意図するところと誤った伝わり方がした」として改めて謝罪、その上で冒頭にある通り、発言内容を「撤回」した。
あわせて「誠心誠意職務に当たり、被災者に寄り添い、復興に全力を尽くしてまいりたい」と、重ねて辞任を否定していた。
復興庁前で行われたアピールは、震災避難者を支援する市民団体が主催したものだ。参加者からは、「『寄り添う』『寄り添う』と言いながら、実際にはこの6年間、復興庁は、復興大臣は私たちに寄り添う姿勢を見せずに来た」など、厳しい批判が飛んだ。
ネット上でも、今村復興相の辞任を求める動きが盛り上がっている。
「上記発言は,避難指示区域外から避難している方々の実情を全く知らないが故の発言です。4月以降の避難生活を継続される、多くの方が生活困窮に陥りながら、避難の理由である放射能被害から家族を守る為に苦闘しています」
「私たちは、貴職に対し、発言の撤回と謝罪、そして復興大臣を辞任することを求めます」
「今村復興大臣の辞任を求める避難当事者・支援者有志一同」が、ウェブサイト「change.org」で行っているこの署名活動には、7日17時時点で実に約3万5000筆が寄せられた。
「税金がいくらあっても足りない」
安倍晋三首相は6日、国会の質疑で辞任の必要なし、との見解を示したが、民進党の蓮舫代表が同じ6日の会見で「復興担当をする責務にあらず。辞任を要求する」と指弾するなど、野党は攻勢を強めている。
一方で、一連のやりとりを詳しく紹介した5日のJ-CASTニュース記事には、
「小池都知事の『安全でも安心じゃない』の戯れ言じゃないけど、科学的に安全な根拠が示されているのに安心と思えないから行かない・帰らないのは本人の自己責任だよ」
「立ち入り禁止地域の人達が避難した市の市民が他県に自主避難しているが、この人たちは移転でしかないと思う。こんなこと(支援)を続けていたら税金がいくらあっても足りない」
と、自己責任論に一定の理解を示す声も寄せられている。
また、ジャーナリストの門田隆将氏は6日、自身のブログで、ブチ切れた会見の場で復興相への質問の中に、福島のみならず栃木や群馬、千葉からも「避難」している人がおり、だからこそ福島県ではなく国の取り組みが必要だ――という趣旨の議論が展開されていることに触れ、
「『群馬』や『栃木』、『千葉』からの避難者に対しても、私たち国民の税金から援助をしなければならないのだろうか。そもそも、なぜ『群馬』や『栃木』、『千葉』から避難しなければならないのか。風評被害に苦しむ福島の人々の姿を知る私には、とても納得することはできない」
と指摘、今村復興相を批判する大手メディアの報道姿勢に疑問を呈している。
7日の会見で、「自主避難者」を含む避難者への今後の対応について問われ、今村復興相は以下のように述べた。
「どういう理由で、どういう事情で帰還されないのかという原因をですね、よく分析をしながら、どういうことが足りないのか、ということについては、そこを把握して、対策を立てるときの参考にしたいと思います」