4月初旬にして、新社会人たちから「会社辞めたい」との声がネット上に続出している。
なぜ入社して1週間と経たないうちにやる気を喪失してしまうのか。どうすれば活気を取り戻せるか。専門家に見解を聞いた。
「正直ここまでクソな会社だとは思わなんだ」
ツイッター上では2017年4月に入り、新卒での新入社員と思われるユーザーたちが悲鳴をあげている。
「すぐにでも辞めたい!!会社にいるだけでもものすごく辛い!!」
「仕事辞めたいわ」
「入って早々もう会社やめたさある」
その理由はさまざまだ。「会社勤務して3日もう辞めたい。やることをくれ」と手持ち無沙汰の状況が耐えられないものや、「正直ここまでクソな会社だとは思わなんだ」と入社前後のギャップに苦しむものもある。さらには「こんなところにいたら人生が勿体無い、三年後ここにいるビジョンが見えないという理由でやめた」と実際に辞めたと言っているユーザーもいる。
なぜこれほどのスピードでやる気を喪失した報告が出てしまうのか。職業選択や能力開発の相談・助言をする国家資格「キャリアコンサルティング技能士」で、採用支援・職場定着支援を手がけるリブリッジ(東京都千代田区)代表取締役社長を務める石松明彦氏がJ-CASTニュースの取材に答えた。石松社長は「会社側と新入社員自身の2つの側面に分けて要因を考察できます」という。
まず会社側の要因としては、「入社直後にすべきである中長期的な仕事のスケジュール共有ができていないケースが少なくありません」と話す。
「新入社員に『あなたにはこういう仕事をしてもらう』という展望を示さずに業務に就かせるケースが少なくありません。また、研修なしで最初から日常業務に就かせるOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を取った場合、新入社員は『放っておかれている』『何をすればいいか分からない』といった状況になる可能性があります。会社側から『大事に育てたい』という姿勢が示されないと、新入社員も意欲を喪失しやすいです」
新入社員自身にも「入社前の確認不足があるのでは」
一方で石松社長は、新入社員自身にも「入社前の確認不足があるのではないでしょうか」と指摘する。
「会社の事業や社風、従業員の様子、自分が受け持つ業務内容が、『入社前に説明されていたものと違った』という話は少なくありません。会社側は説明会や面接では良いイメージを持たれやすい情報に偏って発信することが多いですが、働く現場のリアルな情報は、OB・OG訪問などを通して得ようと思えば得られます。入社前の準備・確認のプロセスを大事にすれば、入ってからイメージが違ったという現象は大幅に減るでしょう」
仮に本当に辞める場合、「誰もが納得できる退職理由があることが必要です。そうでなければ、再就職先を探すのは難しくなります。『1週間も我慢できなかったのか』というマイナスの印象は覆せないでしょう」と石松社長は話す。
そこで、現時点で「辞めたい」という考えを打ち消すには「自分が将来何になりたいのかを改めて明確にすることです。たとえつらくても、将来の展望に照らしてその会社で今自分が得られるものを、1つでも2つでも見つけるべきです」と助言した。「簡単に辞めると、10年後には同期と比べて年収格差が2倍出ると考えた方がよい」とも話していた。
厚生労働省が発表している大卒3年以内離職率は、1995年卒が32.0%で、最新の2013年卒が31.9%。この期間は30%前後で推移しており、石松社長は「ほぼ横ばいです」とする。それでも入社直後の「辞めたい」「辞めた」の声が目立つのは「SNSなどの自由な投稿で心情の『見える化』が進んでいるからではないでしょうか」と考えている。