京都のタクシー会社「都(みやこ)タクシー」が、乗務員からの声かけを極力控える「サイレンス車両」の試験運行を始めた。これは、乗降時のあいさつや運転中のルート案内など必要な会話を除き、乗務員側から客に「雑談」を振ることを禁止した車両だ。
この試験車両について、インターネット上では「ありがたい」「利用したい」と歓迎の声が広がる一方で、「なんか寂しい」「その場の判断で良い」と否定的な意見も目立つ。そこでJ-CASTニュースは今回、導入を決めた理由や背景を都タクシーの担当者に聞いた。
乗務員「これまでより運転に集中できるようになった」
サイレンス車両の試験運行を担当している都タクシー営業部の伊藤由夫さんが、2017年4月5日のJ-CASTニュースの取材に応じた。伊藤さんによれば、試験運行は3月21日から始めたもので、全国で初めての取り組みになるという。
試験運行は京都市域を中心に、都タクシーが保有する全325台のうち10台で実施。車内のヘッドレスト部分に乗務員からの声掛けを控える旨を掲示しており、そこでは「静かな車内を提供する試み」だとサービスのねらいについて説明している。もちろん、客側から乗務員に話しかけることは問題ない。
こうした車両を導入した詳しい事情について、伊藤さんは「お客様が本当に求めているものは何かを考えた上での取り組みです」として、次のように答えた。
「自分が他社のタクシーに乗った時の経験から、乗務員が客に雑談を振ることに疑問を抱いたのが導入のきっかけの一つです。仕事で疲れていたり、飲みにいった帰りで眠くてしょうがなかったり、乗務員に『話しかけて欲しくない』ときは確かにありますよね」
「でも、お客様がその旨を乗務員に伝えるのってとても難しいことじゃないか、そう思ったんですよ。そうした考えから、『乗務員がお客に話しかけるのは、本当に正しいことなのか』という疑問を抱くようになったんです」
こうした問題意識を発端に生まれた今回の「サイレンス車両」。試験運行を始めてから2週間が経つが、客からはどんな反応が聞こえてくるのだろうか。その点について伊藤さんは、
「一番多いお客様からの意見は『時代の流れを感じる』というものですね。もちろん、私達の取り組みに賛同してくれるお客様もいますし、一方で『さびしいなあ』と漏らす人もいます。割合でいえば、半々くらいですかね」
と話す。
また、この取り組みは社内でも大きな反響を呼んでいるといい、実際にサイレンス車両を担当した乗務員からは「これまでより運転に集中できるようになった」「自分が今まで続けてきたサービスを考え直すきっかけになった」との声が出ているという。