肥満や糖尿病などのメタボ予防にも効果が
今井教授はこう説明する。
「これは『長生き遺伝子』と呼ばれるサーチュイン遺伝子を、アルキルレゾルシノールが活性化させたためと思われます。タンパク質は生命の維持に重要ですが、中には『アセチル化』という反応を起こして機能していないタンパク質があります。『アセチル化』は『アセチル基』を外すと元に戻るのですが、サーチュイン遺伝子は『アセチル基』を外す働きがあり、機能していないタンパク質のスイッチをオンにするのです。それが、寿命を伸ばすと考えられます」
サーチュイン遺伝子が欠損したハエにアルキルレゾルシノールを与えても寿命は伸びなかった。このことは、寿命が伸びたのはサーチュイン遺伝子による効果で、そのサーチュイン遺伝子をアルキルレゾルシノールが活性化させたことを示している。サーチュイン遺伝子を直接活性化させる成分の発見は世界初だという。
サーチュイン遺伝子は寿命延長の効果ばかり脚光を浴びているが、サーチュイン遺伝子を活性化させると、肥満や糖尿病などのメタボリックシンドローム(代謝症候群)の予防に効果があることが過去の研究で実証されている。
今井教授はこう語った。
「アルキルレゾルシノールは、ライ麦、小麦ともに外皮に含まれており、胚乳である小麦粉などにはほとんど存在しませんから、全粒粉のパンを食べないと効果はありません。日本人の寿命は、女性で86歳と十分な長さで、これ以上の寿命延長がよいとは思えません。しかし、実際は寝たきりの人が多く、健康寿命が長い状態とは言えません。サーチュイン遺伝子を活性化できれば、脳梗塞や心筋梗塞などの予防が進み、健康寿命の延伸が期待されます。アルキルレゾルシノールの摂取により健康寿命を伸ばす一助となる可能性があります」