増える死亡者、稼働終える火葬場
厚生労働省の人口動態統計によると、11年の死亡者数は約125万3000人で、その10年前に比べ30万人増えた。その後も毎年増え続け、15年約129万人、16年は129万6000人と推定されている。
その一方、同省統計の衛生行政報告例(平成26年=14年=度)の「墓地・火葬場・納骨堂数,経営主体別」データによると、同年度末の全国の火葬場数は4308か所あるが、このうち、過去1年以内に稼働実績があるのは1453か所にとどまる。しかも、火葬場が午前中から稼働していても、遺族の火葬時間の希望は、葬儀・告別式のとの兼ね合いから昼ごろから午後の早いうちが多く、待たされることになってしまう。
こうした火葬場の実情があるのに3000近くの施設が稼働していないのはどうしてなのだろうか。葬祭業者などによると、設備そのものの老朽化や時代に合った環境面での設備を整えられず使われなくなったという。
とくに首都圏では火葬場の近くに住宅街もあり、稼働にともなう排煙や騒音などが周囲に影響を及ぼさないよう万全を期している。また、葬式のイメージが強すぎ周辺住民の感情に影響があるとして、かつては葬送の定番だった宮型の霊柩車の乗り入れが規制され、条例で火葬場への乗り入れを禁止している自治体もある。
火葬場不足に対応して、全国各地では自治体が単独で、あるいは共同で新設を計画しているが、それが環境面などに十二分に配慮されたものでも、迷惑施設とみられて住民による反対に遭っている。
葬儀関連のほか相続など、いわゆる「終活」情報を扱う出版社、鎌倉新書(東京都中央区)が運営するウェブサイト「いい葬儀マガジン」は、16年7月1日付の記事で「火葬をスムーズに行ってもらうためポイント」として「葬儀を行う場所やプランを生前から決めておくという方法がある」とアドバイス。また「火葬時間のピークである昼の時間帯を避け、少し早めたり、遅くしたりすると、スムーズに火葬を行ってもらえる可能性が高くなる」と、時間差を選択肢にあげている。