形成外科医にたっぷり聞きました
 「豊胸手術って、アブナイの?」(前編)

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   豊胸手術後に女性が死亡――。こんなショッキングな事故が新聞紙上をにぎわせたのは2017年2月。愛知県の美容外科で、30代の女性が豊胸手術中に意識不明となり、搬送先の病院で死亡した。同年3月末現在、死因はわかっていない。

   インターネットで「豊胸手術」を検索すれば、あっという間に美容外科やクリニックが多数表示される時代だ。ではいったいどんな手術で、安全性は問題ないのか。2回に分けて、形成外科医に詳しく話してもらった。

  • 北里大学名誉教授でDAA(アンチエイジング医師団)の塩谷信幸氏に聞いた
    北里大学名誉教授でDAA(アンチエイジング医師団)の塩谷信幸氏に聞いた
  • 北里大学名誉教授でDAA(アンチエイジング医師団)の塩谷信幸氏に聞いた

シリコンバックを入れる施術法が主流

   現在、豊胸手術の主流はシリコン・ジェルを詰めたシリコン膜のバッグを胸の中に入れる方法だという。北里大学名誉教授でDAA(アンチエイジング医師団)の塩谷信幸氏は、こう説明する。

「シリコンバックを入れる施術法は、1963年に米国・ワシントンで開かれた国際形成外科学会で、テキサスのクローニン博士が発表しました。施術が始まった当初は、シリコンバッグを入れると異物反応が起きてまわりの組織が硬くなってしまう被害が出ましたが、トラブルが起こりにくいように改良されてきました」

   現在、シリコンバッグの中には厚生労働省に認可されたものもあり、乳がん手術後の乳房再建にも用いられる。

   ほかにも、患者の腹部などから吸引した脂肪や、ヒアルロン酸製剤を注射器で胸に入れる治療法がある。メスを使わないため、シリコンバックを入れる手術よりも手軽な印象があるが、塩谷氏は手軽そうな施術でもトラブルが起こる可能性はあると言う。

「脂肪注入治療は、確かな技術を持つ医師が行えば自然なボリュームアップが可能な場合もありますが、手術後、注入した脂肪の中に血管が新生しないと組織が死んでしまったり、膿瘍になるなどトラブルが多いのも事実。ヒアルロン酸の注入治療に関しては、顔に少量を注入するのとは違って、乳房に100~200㏄も入れるのですから、どんなトラブルが起こるかはわかっていないことが多いです」

海外では使用禁止の製剤が日本で...

「豊胸術で使われるヒアルロン酸は、ほとんどが海外メーカー製ですが、海外では使用が禁止されている製剤が日本で使われているケースもあります」

   海外で認可されていない製剤が、日本で治療に使えるのはなぜだろうか。

「現在、美容医療を含めた自由診療では、医師の自己責任で安全を担保して治療を行うことになっています。海外では使用が禁止されている製剤でも個人輸入等で入手し、治療に使うことができます。ヒアルロン酸は、時間が経つと体内に吸収されるため、注入後にトラブルが起こってもなんとかなるだろうと考える医師も残念ながらいるのです」

=後編に続く=(初出「Aging Style」。一部加筆しています)

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