製パン会社大手のフジパンを告発するツイートが2017年3月31日に出てネットが大騒ぎになった。同社が販売した菓子パン「チョココルネ」に金属が入っていて、それを食べた知人の歯が折れてしまったが、フジパンは治療費も払っておらず、謝る気がない、という内容だ。
ネット上の騒ぎにフジパンは4月2日に情報を新聞社などメディアに情報を開示し、謝罪したが、フジパン側によると示談寸前まで行っていたといい、内実はかなり複雑だ。
金型をかんで歯が欠けた
ツイートは「被害者」の知人を名乗る人物が17年3月31日から自身のツイッターで連投した。知人の歯が折れたにもかかわらず(編集注:後に『欠けた』に変更)、フジパン側は報告書を届けただけで治療費などは放置している。知人の代わりに告発したのは知人がSNSに弱いからと、
「こんだけ時間たっても企業が何もしないからですよ?」
とし、
「ミスにミスを重ね謝罪の心は見えず放置されこの4ヶ月に知人は呆れと怒りで一杯だそうです 怖くてフジパンの商品どころかパンは一つ一つ押しているそうです」
と説明した。そして、チョココルネに入っていたという金属と、知人の歯の診断書、フジパン側が出したという報告書の写真をアップした。
ネット上が大騒ぎになり、フジパンに対する批判のほか、「エイプリルフールじゃないのか?」「歯が欠けるほどパンを強く噛むか?」といった疑問も出たが、
「嘘だと思っている方がいるようなので追加の記事を見ていただけると幸いです」
と、4月3日に配信された「フジパンが金属製の金型が付いたまま菓子パンのチョココルネ1個を販売した」という「ヤフー!ニュース」記事を提示した。
いったい何が起こったのか。J-CASTニュースがフジパンと子会社のフジパンストアーに取材したところ、今回のツイートに対し、納得できないような様子だった。そもそもSNSにはアップしないことを申し入れていたからだという。
慰謝料「合意」の後に「知人」名乗るツイッターが
両社の説明によれば、2016年12月5日、愛知県みよし市の商業施設イオン三好店のフジパンストアーで金属製の金型が付いたまま菓子パンのチョココルネ1個を販売してしまった。この金型はパンに穴を作るためのもので、その穴にクリームやチョコレートを入れて販売する。翌6日に購入した男性から「歯にひびが入った」と苦情があり、従業員が金型を抜き忘れてしまったことが判明した。男性はかなり怒っていて、フジパンストアーは男性に電話をしたり、男性の職場に何度も出かけて行き謝り、慰謝料、歯の治療費、交通費などの支払いについて相談した。しかし話がうまく進まなかった。
そうしているうちに男性は弁護士を立てると言ってきたところ、2017年3月13日には示談の決着が付きそうになった。フジパン側が、口頭で慰謝料などの額を提示したところ、男性から「これでいいですよ」という返事ももらえたという。しかし、今回の件についてはSNSで報告すると言ってきたというのだ。
「私たちとしては、SNSに載せるのは示談の条件とは違うとの認識であり、相手側が弁護士と相談しているということから、当社の顧問弁護士との協議の上での解決にしましょう、と言いました。それから間があり、誰がアップしたのかは分かりませんが、知人の名でああいったツイートが出たのです」
とフジパンストアーの広報は説明。ツイッターで騒ぎが広がったため、事実を公表したという。歯が欠けたのは事実と思われるため、今後も誠意をもって対応したいとも話している。
J-CASTニュースは今回のツイートをした人物に事実関係を確認しようと、ツイッターを通じて連絡を取ったが、ツイッターユーザーは、
「知人は取材等についてはすべてお断りしています。Twitterに載せていること以外の説明は私には難しいです。申し訳ございません」
という返事が返ってきた。