消費者庁は2017年3月31日、天然ゴム製品に触れてアレルギー症状を起こすケースが過去に40件以上報告されているとして注意を呼びかけた。
重症になると呼吸困難や意識障害を起こす恐れがある。また、天然ゴムにアレルギーのある人は、バナナや栗などの果物を食べると同じアレルギー症状を起こすリスクが高いという。
ゴムと果物のタンパク質が同じ構造
消費者庁の発表資料によると、天然ゴムのアレルギーは、ゴムに含まれる「ラテックスタンパク質」が原因物質になる場合が多く、「ラテックスアレルギー」とも呼ばれる。天然ゴムを使った手袋や風船、コンドーム、医療用チューブなどに触れると、腫れやかゆみ、じんましん、吐き気などが出る。重症になると、急激に血圧が下がり、意識障害や呼吸困難に陥る「アナフィラキシーショック」を起こす恐れもある。
また、ラテックスアレルギーを持っている人が栗やバナナ、キウイ、アボカドなどの果物を食べると、口の中にピリピリとした刺激を感じたり、口唇が腫れたりするケースが多く、中にはアナフィラキシーショックを起こす人もいる。これは、果物のタンパク質の構造がラテックスタンパク質とよく似ているため、食べた時にラテックスに対抗する抗体が働き、体がアレルギー反応を起こすからだ。こうした症状は「ラテックス・フルーツ症候群」と呼ばれる。
消費者庁は次のような事例を紹介している。
【事例1】20代の女性が甘栗を大量に食べたところ、全身にじんましんが出て顔がむくんだ。呼吸が苦しくなり、動悸が激しくなったため、救急外来を受診した。そのまま入院したが、翌日には症状は収まった。後日検査すると、ラテックスと栗にアレルギー反応がみられたため、「ラテックス・フルーツ症候群」と診断された。
点滴をしたらよけいひどくなった理由は
【事例2】30代の女性看護師が、仕事で天然ゴム製の手袋をはめると手指がかゆくなるため、皮膚科を受診したところ、「ラテックスアレルギー」と診断された。その後、栗きんとんを食べると、激しくせきこみ、喘鳴(ぜんめい、ゼーゼー・ヒューヒューと苦しむこと)が出たので救急外来を受診した。診察の結果、気道内に発疹があった。いったんは改善したが、点滴をすると、吐き気や動悸がさらにひどくなり、意識混濁の状態になった。調べると、点滴に使用する管の一部に天然ゴムが使われており、アナフィラキシーショックを起こしたと疑われ、そのまま入院した。
【事例3】5歳の男児がゴム風船で遊ぶたびに口唇とまぶたが腫れるので、受診すると、「ラテックスアレルギー」が疑われた。過去に脳外科手術を2回受けており、その際、医師がゴム手袋を使用したため、アレルギー症状を起こすようになったとみられる。検査の結果、「ラテックスアレルギー」だった。
【事例4】30代の女性美容師は、美容学校に入った頃からパウダー付きのゴム手袋でかゆくなった。また、歯科医で診察を受けると口唇が腫れることがあった。美容師の仕事で手荒れがひどくなり、特にゴム手袋をしている時に症状が重くなることに気づいた。たまたまテレビで「ラテックスアレルギー」のことを知った。婦人科の病気で手術することになり、もし、自分が「ラテックスアレルギー」なら、手術の際、天然ゴム手袋を使われると大変なことになると心配し受診したところ、「ラテックスアレルギー」と診断された。
消費者庁では医療や介護、製造業、清掃業などゴム手袋をよく使う人や、慢性的な手指の肌荒れに悩んでいる人、果物を食べると口唇が腫れる人などは発症のリスクが高いとし、「自分にアレルギー体質があるかを知っておくことが重要。疑われる症状が出たら医療機関に相談してほしい」と呼びかけている。