都市圏の成人の2.7%に、過去にギャンブルに興じた経験があり、依存していた疑いがあることが、厚生労働省が2017年3月31日に発表した調査結果で明らかになった。
13年に行われた同様の調査では、4.8%が依存症が疑われるという結果が出ていた。単純計算で3年ほどで「半減」したことになる。その「カラクリ」はどこにあるのか。
2013年は成人4000人にアンケート調査
調査は、厚生労働省の委託を受けて、2016年から国立病院機構久里浜医療センターの研究グループが実施。東京23区や大阪市、名古屋市、福岡市など全国11都市に住む20歳から74歳までの男女2200人を無作為に抽出し、協力が得られた993人に対して米精神医学会が策定した国際的な診断基準による約100問の調査項目を使って面接した。
その結果、生涯でパチンコやパチスロ、競馬などのギャンブル経験があり、依存していた疑いがある人は2.7%(26人)だった。日本の成人(20歳以上)人口は、約1億503万人。単純計算で、全国で約283万人にのぼることになる。
パチンコやパチスロに最もお金を使った人は1.9%(16人)。また、全体の0.6%(5人)は、過去1年間に依存症が疑われる状態になっていたことも明らかになった。
調査は、「負けた分を取り返そうとギャンブルをした」「負けても、勝っているとうそをついた」などの項目に、一定数当てはまる人を集計した。
同様のギャンブル依存症の調査は2013年度に、全国の成人約4000人を対象にアンケート方式で実施。そのときは全体の4.8%(推計で約536万人)が、生涯でギャンブル依存症の疑いがあるとされた。今回は、単純計算でそのときから約半分に減ったことになる。
13年度は全国調査、16年度は都市圏で調査
この調査結果に、インターネットの掲示板などには、
「隠さず正直に調査に答えて明るみに出たのが2.7%なw」
「なんか、この数字ホンマなん?」
「ソーシャルゲームの課金もギャンブルの一種だろ。それも含めたらもっと跳ね上がりそうだ」
「サンプルが少なすぎだろ!」
「たったの2.7%かよ。パチンコ禁止すれば解決じゃん」
「カジノ法案の時に500万人以上いるって聞いたけど。なんで減ったん?」
といった声が寄せられている。
ただ、「2.7%」の数字に、「少ない」という印象を受けた人は少なくないようで、
「(2016年12月のカジノ法成立で)カジノとギャンブル依存を切り離すのに必死だな」
など、「政府よりの数字」と受けとめている人もいる。
今回の16年度の調査の対象は11都市で行われたのに対して、13年度調査は全国を対象に行った。こうした調査対象の違いが結果に反映された可能性もある。今回結果が明らかになった調査は、17年度に行う調査の「予備調査」の位置付け。
研究グループは、(1)全国の地域から無作為に抽出し、全国的な状況を把握する(2)調査対象者数を約1万人に増やし、より正確な推計値を得る、といった改善を加えながら実態把握に努めるとしている。
調査を委託された国立病院機構久里浜医療センターには、ギャンブル依存症専門の治療部門があり、ウェブサイトにはギャンブルへの「のめり込み度チェック」を用意している。
パチンコやる人、より習慣化している?
日本はカジノが禁止されているにもかかわらず、海外に比べてすでにギャンブル市場が大きく成長しているとされる。その大きな要因に、パチンコ・パチスロの存在がある。
日本生産性本部の「レジャー白書 2016」によると、2015年の余暇市場の規模は72兆2990億円(前年比1.0%減)で、このうち、娯楽部門にあたるパチンコ・パチスロ市場の規模(パチンコの貸玉料やパチスロの貸メダル料)は23兆2290億円(前年比5.2%減)。参加人口は、2014年の1150万人から80万人減の1070万人だった。
市場規模は2005年の34兆8620億円のピークから2012年を除き、毎年右肩下がりに縮小しているものの、公営ギャンブルの日本中央競馬会(JRA)の売り上げ(約2兆5000億円、2015年)の約10倍を有する、巨大マーケットであることには変わりない。
全日本遊技事業協同組合連合会によると、パチンコ・パチスロなどの店舗数は減少傾向にあるが、2015年12月末時点で1万1310か店ある。
その一方、「レジャー白書2016」で一人当たりの参加回数とその費用をみると、年間の参加回数は2014年の22.8回から15年は32.4回に増えた。1人あたりの年間平均費用は9万9800円で、14年から1万4600円も増えていて、より習慣化している傾向が強まっているようすがうかがえる。
政府は、パチンコの出玉規制の基準見直しや、パチンコ店や競馬場などにあるATM(現金自動出入機)のキャッシング機能の廃止などを盛り込んだギャンブル依存症対策(案)をまとめ、秋の臨時国会で関連法の改正をめざす。