男性の「精子力」を数値化して不妊治療に貢献
石本助教によると、「数理の目」を使うと、不妊治療の発展に貢献することも期待できるという。
「男性の『精子力』をより詳しく数値化することにつながるかもしれません。たとえば、精子の『よい運動性』の数値化です。男性不妊の診断では、精子の数、運動している精子の割合、スピードなどを指標としますが、精子の頭の位置を元にして、尻尾まで見ることはほとんどありません。尻尾の運動まで含めて数値化できれば、人工授精に使用する精子の選別につながると思います」
「また、哺乳類の精子はメスの卵管内に入ると、卵子に速く到達しようと、泳ぎ方を激変させます。超活性化して、『のたうち回る』ように激しく尻尾を振ります。この『のたうち回る』現象を数値化できれば、きちんと『のたうち回る』ことができる精子を選別することができるでしょう」
そして、石本助教は最後にこう語った。
「今回の研究は個々の精子が対象でしたが、これからは精子の集団運動や、女性の体内のような複雑形状流路内の運動を数学的に理解し、ダイナミックな『精子の旅』の全体像に迫りたいです」