銀盤の王子が異彩を放った瞬間だった。
フィギュアスケートの世界選手権は2017年4月1日、男子のフリーが行われ、羽生結弦(22=ANA)が自身の世界記録を更新する223・20点を叩き出し、SPとの合計321・59点で金メダルを獲得した。
SP2位の宇野昌磨(19=中京大)は214・45点を記録し、フリーでは初めて200点の大台を突破した。合計点も初めて300点を超え(319・31)、銀メダルを獲得した。
圧巻のノーミス演技
羽生が冒頭の4回転ループに成功すると、会場は拍手に包み込まれた。それに後押しされたのだろうか。羽生はSPで失敗した4回転サルコーと3回転トウループの連続技も鮮やかに決めたほか、3回転フリップ、4回転サルコー、4回転トウループと3回転半‐2回転トウループ、3連続ジャンプ、3回転ルッツ...ジャンプをすべて跳び切った。満足気な表情を浮かべてキス・アンド・クライに戻った羽生に、会場アナウンスは「223.20」の世界歴代最高得点を告げた。
2日前のSPは振るわなかった。演技冒頭の4回転サルコーと3回転トウループの連続技に失敗した上、名前がコールされてから30秒以内に演技し始めなければならないルールにも抵触した。得点98.39の5位に終わり、首位のフェルナンデス(スペイン)とは10点以上離された。
しかも羽生は今季、出場した5戦すべてのフリーで何かしらジャンプのミスを犯している。4回転サルコーと3回転トウループの連続技に至っては、1度も成功していなかった。
解説者の佐野稔氏は、3月31日付のサンケイスポーツに寄せたコラムで
「羽生は、4回転サルコーがトラウマになっている。無我夢中で跳べておらず、練習をたくさんしてきたというコメントを報道で見聞きするが、結果が出ていないということは克服できていないということ」
とコメント。フリーでフェルナンデスを破るためには
「3種類持っている4回転ジャンプをミスなく滑りきるしかない」
と指摘していた。
だが羽生は見事、フリーで4本の4回転ジャンプを成功し、世界歴代最高点で最高のパフォーマンスを見せた。