「ドライカレー」と聞いて、どんな料理が思い浮かぶ――? こんな質問に対する答えが「人によって大きく違う」として、いまインターネット上で熱い「ドライカレー論争」が巻き起こっている。
ネット上の意見は大きく、カレーピラフのような料理を思い浮かべる人と、キーマカレーに近い料理を思い浮かべる人の二派に分かれている。いったい、どちらが「正しい」ドライカレーなのだろうか。専門家の意見を聞いた。
「右派」「左派」の激突
今回の「ドライカレー論争」が勃発したのは、ツイッターユーザーの「なみの」さんが2017年3月27日に寄せた投稿がきっかけだ。投稿者は「彼が想像するドライカレー」「私の想像するドライカレー」というコメントを添えて、二枚の画像をアップロードしている。
一つはカレーをご飯に混ぜ込んであるピラフ状の料理。もう一つは、ひき肉など細かく刻んだ具材を使ったキーマカレーに近いものが、白飯の上に乗せたものだ。こうした二枚の画像を掲載した上で、投稿者は、
「認識の違いがあった。 作る前に気付いてよかった」
とコメントしている。
この投稿では、左側に「ピラフ風」の料理の写真、右側に「キーマ風」の料理の写真が掲載されていた。そのため、ツイッターでは、
「ドライカレーって聞いたら左(=ピラフ風の料理)を思い浮かべるかなぁ」
「ドライカレーと言えば左。右はキーマカレーだよね?」
「右(=キーマ風の料理)がドライカレーで左はただのカレーピラフ」
「自分も右側の認識だな。ドライカレー注文して左出てきたら悲しい」
などとドライカレーをめぐって「右派」と「左派」の意見が激しく対立。こうした反応を見ても、ドライカレーという料理のイメージが人によって大きく異なることが分かる。
ルーツは「日本郵船」
実際、レシピ投稿サイト「クックパッド」でドライカレーと調べると、「ピラフ風」と「キーマ風」の二種類のレシピが表示される。登録されたレシピをみると、どちらかといえば「キーマ風」の調理法を紹介するものが多い印象だ。
ただ一方で、大手食品会社「味の素」が運営している「レシピ大百科」というサイトでは、ドライカレーのレシピとして「ピラフ風」の料理を取り上げている。また、グリコが販売している「ドライカレーの素」が想定しているのも、「ピラフ風」の方だ。
はたして、どちらが「正しいドライカレー」なのか。カレー総合研究所(東京都渋谷区)の代表で一般社団法人「カレー大学博士」学長の井上岳久さんは、J-CASTニュースの取材に、
「専門家の間でドライカレーは、白いご飯の上にキーマカレーに似たものを乗せた料理を指すことが定説となっています」
と話す。その理由については、ドライカレーという名前の料理が全国に広がった、そもそもの「経緯」にあると説明する。
「現在のドライカレー(編注・キーマ風のもの)は、日本郵船の豪華客船で提供されていた料理が全国に広まったものだと言われています。これは本場のキーマカレーをルーツに、それを日本人の口に合うように洋食風にアレンジした料理です」
実際、日本郵船の公式ウェブサイトでも、
「ドライカレーは、明治時代に当社の欧州航路船上で日本人コックが考案したと伝えられています」
と説明。同社が所蔵する資料では、最も古いもので1911年に運航した船のメニューに、ドライカレーという名前が見つかるという。
ただ井上さんは、「ピラフやチャーハンのような料理をドライカレーと言う地域もあります」とも指摘。だが、「それは関西地方など一部に限られるようです」とした上で、
「やはりドライカレーといえば、キーマカレーに似たものでしょう」
と話している。