【震災6年 ふるさとの今(4・完)宮城県気仙沼市】
「苦境」逆手、活路はシンガポールに 水産加工、団結の力で交渉力

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「気仙沼の味」が海を越えて広がるか

   鹿折の水産加工企業にとって海外は未知の領域で、チャレンジだ。

   参加企業のひとつ、「気仙沼ほてい」は、フカヒレを中心とした缶詰やレトルトパウチ製品が主力だ。過去に海外進出の積極的なプランはなかったが、販路が国内だけに限られるといつか行き詰まるとの危機感はあったと、販売部長の熊谷敏氏は話す。組合から今回の話を聞いたとき、「長い目で見たら、(海外進出は)必然」と判断した。

   だが、2月にシンガポールのバイヤーが来て話した際、「初耳」の事実が多かった。現地では一般に3食とも外食で、家庭で調理しない。また外食産業向けの魚介の食材では、冷凍冷蔵の物流が発達していて、バイヤーからは「加工食品よりも、できれば(生の)原料に近いものが欲しい」と言われたという。熊谷氏にとっては「ショックだった」が、半面「現地の実情を把握できたのは大きい」とも考える。気仙沼ほていでは生鮮部門の工場を運営しており、ここから活路が開けるかもしれないとみている。

   サケのほぐし身を事業の柱とする「あかふさ食品」は、丁寧な手作業でつくる瓶詰の「ゴロほぐし塩鮭」「ゴロほぐし焼鯖」が消費者に人気だ。魚の生臭さがなく、塩加減も強すぎないので、そのまま食べてもよいし、料理の中に入れてもほかの食材の味を邪魔しない。海外では受け入れられやすそうだ。

   だが、被災した工場の再稼働を始めたのは2016年10月とごく最近。しかも人手不足で、海外市場に目を向ける余裕がない。社長の赤坂知政氏は、「現在抱える国内の顧客が第一だ。ただ、海外に興味はある。現状では可能な範囲で考えていきたい」と話している。

   組合所属の各社は、2017年10月には、シンガポールで開催される日本食の見本市「フードジャパン」出展を予定している。現地での足掛かりを築き、2018年度以降は組合が主体となって自力で海外への輸出拡大に取り組む予定だ。

   気仙沼の「ふるさとの味」が、海を越えて広がる日を目指す。(おわり)

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