プロ野球のペナントレースが2017年3月31日にいよいよ開幕する。スポーツ各紙やテレビ各局の直前特集では、評論家によるセ・パ両リーグの「順位予想」が盛んに行われている。
そんな中、熱心なファンの間で注目されているのが、野球について学習した「人工知能(AI)」による順位予想だ。過去10年のさまざまな成績指標に、最新のデータ分析技術を掛け合わせて導き出されたシーズンの展望は、はたしてどんな結果になったのか。
「300万球」分の公式戦データを学習
セ・パ両リーグの順位を予想したのは、広告大手・電通の制作チームが開発を担当した「ZUNO(ズノ)」というスポーツ解説システムだ。
世界トップのプロ棋士を破ったことで大きな注目を集めた「AlphaGO(アルファ碁)」にも採用された「ディープラーニング」という機械学習技術を応用。2004年から記録されているプロ野球公式戦の全打席データを学習することで、投手の配球などを統計的に予測できるという。
300万球分の配球データを学習したズノの予測によれば、日本ハムと西武の開幕戦1回オモテ、有原航平投手(日ハム)が投じる初球は「インコースのストレート」になる確率が最も高いという。
そんなズノは、17年のペナントレースの順位予想も行っている。過去10年の各チームの主要な選手成績を分析した指標を掛け合わせ、まずは「総得点」と「総失点」を算出。この2つのデータを、セイバーメトリクス(野球統計)の分野でよく使われる特殊な数式にあてはめ、各チームの「勝率」を予測した。
オープン戦首位のロッテは「5位」予想
セ・リーグ1位に予想されたのは、オープン戦最下位の巨人。山口俊やマギーなど獲得した新戦力の活躍が未知数で、シーズンの雲行きを不安視する評論家も少なくないが、人工知能の予想では首位に。一方、「ライバル」の阪神は最下位という予想だった。
続いてパ・リーグ。評論家の予想では巨大戦力を誇るソフトバンク優勝の意見が多いが、人工知能が予想したリーグの覇者は日本ハム。12勝1敗(3分け)で12球団ダントツのオープン戦首位になったロッテは5位に終わるとの予想になっている。
このように、評論家とは少し毛色が異なる人工知能の予想結果には、野球ファンも大きな注目を寄せている。ツイッターやネット掲示板には、
「結構意外だなぁ。セ・リーグは特に」
「なかなか妥当な線をいっとるなー。オリックスもちょい上がりそうな気もするが、、、果たしてどうなるか」
「パ・リーグはまさにこの通りになってもおかしくない」
とさまざまな反応が出ている。そのほか、「阪神が最下位なのは理解できない」「あの戦力で最下位は無いわ」という熱心な虎党からの声も目立った。
とはいえ、予想に当たって気になるのが「新戦力」の扱いだ。この点について、システムのディープラーニング部分を担当した株式会社Qosmo(コズモ、東京都渋谷区)の代表で工学博士の徳井直生氏は3月30日のJ-CASTニュースの取材に、
「ズノの特徴は、過去数シーズンのデータをまとめて選手の成績を予想する点にあります。そのため、過去のデータがない新外国人選手やルーキーの場合は予想が難しいため、各リーグの平均的な選手の指標で計算しています」
と話す。また、ズノの企画・ディレクションを行った「Dentsu Lab Tokyo(電通ラボ東京)」の田中直基氏は、
「今後も改良を重ね、こうした選手についてもより精度を高めて予想する方法を検討しています。あくまで、今回の順位予想は現時点のデータですから」
と話していた。
人工知能による順位予想の詳細は...
ズノによる今回のセ・パ両リーグの順位予想は、次の通り。
<セ・リーグ>
1位 読売ジャイアンツ
2位 横浜DeNAベイスターズ
3位 広島東洋カープ
4位 東京ヤクルトスワローズ
5位 中日ドラゴンズ
6位 阪神タイガース
<パ・リーグ>
1位 北海道日本ハムファイターズ
2位 福岡ソフトバンクホークス
3位 埼玉西武ライオンズ
4位 オリックス・バファローズ
5位 千葉ロッテマリーンズ
6位 東北楽天ゴールデンイーグルス