不安から電話のコンセントを引き抜く母親
――ADHDの子を育てていると、母親のストレスは大変なものですね。プログラムの中に、母親に向けた講座が盛りだくさんにあるそうですが。
「母親自身が、心理面での健康を保ち、意識改革をすることがとても大切です。プログラムでは、日々子育てで感じているストレスについて話します。子育ては長期戦ですから、まずお母さんの健康がいかに大切かについて気づいてもらうのです。また自分の思考と感情と行動のパターンを見つめ直すことも行います。例えば、午前中に自宅の電話のコンセントを引き抜いている母親がいました。電話がかかってくると、とっさに『うちの子がまた何かやったのか』と思い、不安になるからです」
「別の母親は、家でずっとテレビを見ている子を見ると、何も言えなくなり気持ちが落ち込むそうです。『宿題やりなさい』と注意したいけど、聞いてくれない、反抗されるに決まっている。何度もイライラする経験を繰り返してきて、すべてが空しくなると言います。テレビを見ている子を見た途端、自動的にパターン化した考えや感情が湧いてきて、消極的な行動をとってしまうのです。母親たちが体験談を語り合い、自身のそのような思考と感情と行動の仕組みを知ることで、積極的なパターンへ再構築してもらうのです」
――なるほど、まず母親自身が変わることが大事なのですね。
「それと、母親たちにコミュニケーションスキルを磨いてもらいます」