「もっと頑張れ」と言わず、「スゴイ、よくやったね」
――日本の親はほめることが苦手である、もっとほめましょうと論文の中で強調していますが、どういうことでしょうか。
「日本人は、子育てをするうえで『反省する』『努力する』ことを大事にします。欧米人に比べ、素直に子どもをほめることが苦手な親が多いと思います。例えば、子どもがテストで80点を取っても『スゴイ、よくやったね』となりません。『どこをミスしたの? もう少し頑張れば90点とれたのに』と、もっと努力することを重視してしまいがちです。私たちは、ささいなことでも『ADHDの子は1日10回ほめてください』と勧めています」
――1日10回ですか。いいアドバイスですね。研究に参加した母親たちはほめていましたか。
「1週間ためしてもらい様子を聞くと、『全くほめられなかった』『ほめようと思って子どもを見ていたが、ほめるところがなかった』『ほめたいと思っていても、なぜかほめられなかった』という母親がいます。確かに、ADHDの子は反抗的な問題行動をとりがちで、ほめにくいことはわかりますが、ADHDの根本的な原因からいっても、ほめることがとても大切なのです。脳には報酬を得た時や将来得られると想像した時に神経伝達物質のドーパミンが分泌されます。幸せな気持ちなったり、やる気が出たりする物質ですが、ADHDの子は、ドーパミンの分泌に問題があり、勉強を続けたら100点が取れる、などの長期的な報酬に対する期待に動機付けられていい行動を繰り返すこと(学習)が難しいのです」