消費者庁は2017年3月30日、乳児が呼吸困難に陥る恐れがあるため、「1歳未満の赤ちゃんにハチミツを与えないで」という注意を発表した。
これは同年2月、東京都内でハチミツを食べた赤ちゃんが、「乳児ボツリヌス症」を発症、呼吸困難になり搬送される事故があったからだ。もともと、乳児がハチミツを食べるのは危険だが、乳児ボツリヌス症のことを知らない保護者が多いため、同庁の「子ども安全メール」で呼びかけた。
「1歳未満の子に与えないで!」と消費者庁が呼びかけ
同庁の発表によると、乳児ボツリヌス症とは、1歳未満の乳児の大腸内でボツリヌス菌が増え、毒素を産出することにより起こる病気だ。潜伏期間が3日から30日と長いのが特徴。全身にまひが起こり、体がぐったりする。ものが飲みこめなくなったり、まぶたが下がったり、のどが渇いたりする。重症になると呼吸困難におちいり、死亡するケースもある。致死率は1~3%で、赤ちゃんの原因不明の「突然死症候群」の数%は乳児ボツリヌス症によるという海外の報告もあるという。
ボツリヌス菌は芽胞(がほう=耐久性の高いカビの胞子のようなもの)の状態で土壌の中に存在する。植物の花粉はこの芽胞に汚染されていることがあり、ハチミツも花粉を通じて芽胞に入り込む場合が少なくない。芽胞は、100度程度では長時間加熱しても殺菌できない。特に、加工をしていない「天然ハチミツ」にはボツリヌス菌が入り込む可能性が高く、これを1歳未満の赤ちゃんが食べると、腸内で繁殖し乳児ボツリヌス症を引き起こすのだ。
同庁では「ハチミツは、おいしくて栄養価が高く、そのまま食べても料理やお菓子に使ってもいい、利用範囲が広い食材です。しかし1歳未満の赤ちゃんには、あげてはいけない食べ物の1つなのです。ボツリヌス菌の芽胞は高温に強いため、一般的な調理や加工では殺菌できません。赤ちゃんにはハチミツ入りのお菓子や料理も避けた方が無難です」と強調している。