国土交通省が2017年3月21日発表した公示地価(1月1日時点)は、住宅地の全国平均が前年比0.022%上昇とほぼ横ばいながらも、2008年以来9年ぶりにプラスに転じた。地方圏は0.4%下落したが、東京、大阪、名古屋の3大都市圏が0.5%上昇したほか、地方圏の中でも札幌、仙台、広島、福岡の中枢4市が2.8%上昇と高い伸びを示し、全国平均を押し上げた。商業地は1.4%上昇し、2年連続でプラスとなった。
住宅地はリーマン・ショック以来の下落に歯止めをかけた格好で、国交省は「政府・日銀のマイナス金利政策や住宅ローン減税など住宅需要の下支え効果があった」とみている。しかし、リーマン・ショック前の2008年1月時点の地価との比較では、東日本大震災後に転入者が増えた宮城県が全国で初めて08年の水準をわずかに超えただけ。東京都、神奈川県、愛知県、福島県では9割を超えるレベルまで地価が回復したが、21県は8割に達せず、地価の回復で3大都市圏などと地方圏の格差が鮮明になっている。
最高額、大幅に更新
商業地は3大都市圏が3.3%と4年連続で上昇。このうち、訪日外国人観光客でにぎわう大阪圏は4.1%上昇と高い伸びを示した。地方圏は0.1%下落したが、地域の拠点として再開発が進む中枢4市が6.9%上昇し、地方圏の下落幅を縮小した。国交省は「訪日外国人観光客の増加などで全国の主要都市で店舗やホテルの需要が高まり、再開発事業が進展した。金融緩和で不動産投資も旺盛になった」とみている。
住宅地と商業地を合わせた全用途は0.4%上昇で2年連続のプラスだった。
都道府県別の住宅地は、人口増加を背景に戸建て・マンションとも需要が高い那覇市を中心とする沖縄県が3.0%上昇でトップ。商業地は大阪府が5.0%上昇と最も高い伸びを示した。最下位はいずれも秋田県(住宅地2.7%下落、商業地3.2%下落)だった。
全国の上昇率ランキングのうち、住宅地は地下鉄東西線が開業した仙台市が上位4位までを占め、商業地は訪日外国人の増加で再開発が進む大阪市が上位5位までを占めた。
全国の最高額は東京都中央区銀座4の「山野楽器銀座本店」で、11年連続。1平方メートル当たり5050万円で、過去最高だった前年の4010万円を大幅に更新した。