栃木県那須町で高校生ら8人が雪崩で死亡した事故で、冬山や春山の登山を県教委が条件付きで認めていたことがネット上で論議になっている。
「雪崩の起きにくいところと判断していました。結果としては、反省しないといけないと思っています」。高校生を引率した栃木県立高校の教諭は、2017年3月29日夕の会見でこう話した。
スポーツ庁は、冬山登山を「原則禁止」
そもそも、スポーツ庁では、高校生らの冬山登山を原則として行わないよう毎年通達を出している。これに対し、栃木県教委では、山岳関係者らでつくる登山計画審査会を通じて登山を認めてきた。
今回は、「春山安全登山講習会」だとして、主催者の県高体連が審査会を通さずに、各校の山岳部員らを対象に実施していた。県教委のスポーツ振興課によると、毎年慣例でそうしてきたそうだ。
しかし、事故の起きた3月27日は、茶臼岳までの往復登山も計画していた。これは大雪注意報を受けて撤回したものの、スキー場の営業が20日で終わっているにも関わらず、雪をかき分けて進むラッセル訓練に踏み切った。しかも、スキー場の外の尾根付近まで出ていき、雪崩に巻き込まれてしまった。
報道によると、現地を調査した専門家は、目で見ても分かるような雪崩が発生しやすい典型的な場所だったと証言している。
富山は「雪が残っていない状態の登山だけ」
冬山登山については、都道府県によって、対応がまったく異なっている。
富山県教委の保健体育課では、スポーツ庁の通達を各校に周知させており、「雪が残っていない状態の登山しかされていません」とJ-CASTニュースの29日の取材に答えた。各校では、計画書を出したうえで、4月下旬から11月まで登山しているそうだ。
なぜ栃木県は、冬山や春山の登山も認めることをしているのか。
県教委のスポーツ振興課では、取材に対し、県高体連の登山専門部が1952年に立ち上がり、その要請を受けて登山計画審査会が設置された、とその経緯を説明した。安全が十分に確保されるとの条件付きで審査会が登山を認めており、2016年度は、15校27件が認められた。このうち、6校6件は、県教委が冬山とする11月末から2月末までの期間だった。ただ、コースや日程の変更などが求められたケースもあったという。
今回の登山講習会が冬山や春山の登山に当たる可能性については、「審査会を通すべきであったか、検証していきたい」と話している。また、冬山や春山の登山を全面的に禁止すべきかどうかも検討しているという。
スポーツ庁の健康スポーツ課によると、冬山登山については、1974年の通達で、学校や保護者の理解を得て、指導者などの条件が整えば、安全な場所での基礎的訓練の範囲なら例外として認めるとしていた。栃木県のケースについても、例外に当てはまる可能性はあると取材に答えた。
今回の講習会が例外に当たるのかどうかについては、「今後の調査内容を見て判断したい」としている。