格安の海外ツアーを主催する旅行会社の「てるみくらぶ」(東京)が2017年3月27日、東京地裁に破産を申請し、旅行客らに波紋が広がっている。代理人の弁護士らによると、負債総額は約150億円で、このうち約99億円が旅行者約9万人への旅行代金の返金に当たるという。旅行代金の返金には、同社が加盟する日本旅行業協会に弁済制度があるが、今回は弁済率が1%程度にとどまる見通しで、旅行者に大きな影響を及ぼしそうだ。
同社の山田千賀子社長は27日に会見し、「経営状況の悪化に伴い、航空券購入代金やお客様の宿泊先などに支払いのめどが立たず、破産手続き開始の申し立てに至った。迷惑をかけ、申し訳ない」と陳謝。「お客様が渡航先のホテルなどを利用できない可能性が高く、渡航をお控えいただきたい」と、顧客に異例の要請を行った。
「広告費がかさみ、資金繰りが悪化」
同社は1999年2月に旅行会社として旅行業登録。自社のインターネットサイト「てるみくらぶ」を中心に、ハワイ、グアム、韓国、台湾などの格安旅行ツアーを販売してきた。2015年春からネットだけでなく、中高年向けの広告を新聞に積極的に掲載するようになった。2016年9月期で193億円の売上高があったが、広告費がかさみ、資金繰りが悪化したという。
旅行会社が経営破たんした場合、旅行業法に基づき、旅行者に旅行代金を返金する弁済業務保証金制度がある。旅行会社が売上高に応じて、日本旅行業協会などに分担金を負担するもので、てるみくらぶは2016年度2400万円を支払っていた。弁済業務保証金は分担金の5倍を限度額に支払われるため、今回は1億2000万円となるが、旅行代金の返金額約99億円に対し、弁済率は1%程度にとどまることになる。
海外に2500人、ホテルへの支払いに滞りも
観光庁によると、旅行会社の経営破たんで弁済業務保証金が支払われたケースは、現行制度となった2008年度以降で17件あるが、うち15件は弁済率100%で、残る2件の弁済率も7割と4割だった。観光庁は「今後、消費者保護に課題があれば、さらなる措置が必要か検討したい」としている。
観光庁は今回、旅行業法に基づいて26日に同社に立ち入り検査を行った。同社のツアーで海外旅行中の旅行者は同日現在でハワイ、韓国、台湾など38か国・地域に約2500人いると判明。2500人は既に発券済みの航空券を持っているため、帰国は可能だが、ホテルへの同社からの支払いが滞っているため、宿泊費の支払いなどを求められるケースがすでに出ているという。