マンションなど一般住宅の空き部屋に旅行者を有料で泊める「民泊」を本格解禁する住宅宿泊事業法案(民泊法案)がようやくまとまった。2017年3月10日に閣議決定し、開会中の通常国会に提出する。今国会で成立させ、年内の施行を目指す。無許可物件でトラブルなども起きていたため、一定ルール下で合法的民泊をきちんと制度化することで、観光立国に向けた普及を図る。ただ、ホテル・旅館業界には客を奪われる不安がある一方、過剰な規制で普及を妨げられるとの懸念もあるなど、運用面には課題も多い。
民泊が注目される背景には、外国人観光客の急増がある。特に2020年東京五輪に向け、訪日客を現在の1.7倍の年4000万人に増やす計画だ。都市部でのホテル不足解消の切り札としても民泊に注目している。今国会で新法が成立すれば、17年度中に施行したい考えだ。
「シェアエコノミー」の代表選手
一段の増加が見込まれる中で、ホテルの絶対的な不足への対処として、民泊が不可欠な状況にある。受け入れ側にも、使っていない自宅の空き部屋や、所有する空き家の有効活用というメリットがあり、「シェアエコノミー」の代表選手と位置付けられる。
具体的には、米国生まれの仲介サイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」などで予約を受け、多くの外国人が利用する。外国人旅行者の受け皿になっているが、本来は旅館業法の許可取得が必要だが、要件が厳しいため、多くが無許可の「違法営業」状態。国家戦略特区制度を活用した民泊制度もスタートしているが、東京都大田区と大阪府だけにとどまる。
厚生労働省の2016年10~12月の調査では、仲介サイト掲載の全国1万5127物件のうち、自治体の許可を得ていたのは2505件(16.6%)、無許可4624件(30.6%)、残り7998件(52.9%)は住所が非公開など実態不明の物件で、無許可のものが多いとみられる。東京23区など大都市部の8200件では、許可を得ているのは150件(1.8%)にすぎなかった。
新法案は、一定のルールで民泊を積極的に認めることで、こうした無法状態の解消を目指すもの。具体的には、民泊の営業を都道府県などへの届け出制とし、衛生対策、近隣トラブル防止のための苦情処理、民泊の標識掲示義務などを課す。