家族同然に、いや家族以上に可愛がってきたニャンコやワンコ。死んだ後も一緒にいたいと、同じ墓に入ることを希望する人が増えている。
ほかの使用者への配慮から公立霊園ではペットを一緒に埋葬することを禁止するところが多いが、民間の霊園や墓地ではペットと一緒に入れる所が急増している。もう、こっそりペットの骨壺を持ち込む秘密の作戦をしなくてすむ?
「自分が死んだら内緒で愛犬のお骨を棺に入れて」
J-CASTヘルスケアは、どうしても飼っている猫と一緒に永眠したいと熱望している千葉市の男性Aさん(60代後半)を取材した。Aさんは「孫より可愛い」という猫を2匹飼っており、以前飼っていた猫を2匹、自宅の庭に埋葬している。Aさんはこう語った。
「いま飼っている猫たちもトシですから、いずれ庭に埋めるつもりです。私が死んだら、親父やお袋と一緒の墓には入りたくない。妻には、骨の大部分を房総の海に撒いて、ほんの少しを庭の猫ちゃんたちの横に埋めてくれと頼んでいるのです。ところが、『化けて出てこられたらイヤ!』と妻が承知してくれなくて、死ぬに死ねないのです」
Aさんと同じ悩みをもつ人は多い。女性向けサイト「発言小町」(2014年11月26日付)の「ペットと一緒のお墓に入りたい」ではこんな投稿があった(要約抜粋)。
「最近可愛がっていた猫を亡くしました。まだ8歳でした。泣いて、泣いて、毎日をすごしています。一緒にお墓に入りたいですが、ネットで検索すると、人間と動物は一緒にお墓に入れないらしいです。ペットを亡くした方、どうされましたか?」
この投稿には、同情の声が殺到した。2014年当時、まだペットと一緒に入れる墓の存在があまり知られていなかったらしく、「ペットOKのお墓がありますよ」という指摘がある一方、こんな涙ぐましい努力をしている人が多かった(要約抜粋)。
「愛猫家の知人が計画している方法です。火葬した猫のお骨を、布の袋に入れて保存してあり、自分が死んだ時に必ずお棺の中へ入れるよう頼んであるそうです。骨壷のままだと棺に入れられないので、『とにかくこれだけは必ず棺に入れて』と。確かにこうすると一緒のお墓どころか、一緒の骨壷に収まるわけですから、絶対確実といえますね」
「現在ペット霊園に愛犬が6匹入っています。今はマンション住まいですが、将来は戸建に移り、犬たちのお墓を庭に移転させる計画です。私が死んだ時には、家族に特大の骨壺を用意してもらい、内緒で歴代の犬の遺骨を一緒に投入してもらいます。幸い家族で私一人がプロテスタントですので、これは私一人だけの墓だから出来ることだと思います」
こうした切羽詰まった計画に対し、意外に簡単な「裏ワザ」をアドバイスする人がいた。とむらいの「専門家」だ。
「私は、浄土真宗の僧侶です。お墓に納骨する時に、可愛がっていたペットのものと思われるお骨と、故人さまのお骨を一緒に納骨される方を大変よくお見かけします。私も、よくそれらしき納骨法要をしました。また、可愛がっていたペットの、手作りの心のこもった仏壇を飾られる方もいます。参考にしていただけたらと思います」
最後は一緒に土に帰る樹木葬もオススメ
ところが、現在、インターネット上では「ペットと一緒に眠れるお墓」の情報サイトがたくさんある。47都道府県ごとにクリックすれば、値段、立地条件、区画の広さなどがすぐわかる。「日刊ペット葬新聞」(日刊葬儀新聞社主宰)というペット葬の専門サイトまであり、ペットを手元において供養する「遺骨ペンダント」や「家庭用樹木葬化粧鉢」などを紹介している。これは、お骨でペンダントを作ったり、お骨を鉢の土に埋めてお気に入りの木を植えたりして亡きペットをしのぶものという。
J-CASTヘルスケアは、東京や神奈川などでペットと一緒に入れる所も含め、多くの霊園を扱っている「美郷石材」常務取締役の新美整さんを取材した。
――何年くらい前からペットと一緒の墓が増えてきたのですか。
「10数年前からです。ここ4、5年は特に多くなりました。弊社で取り扱いの霊園は約200か所ありますが、そのうち約50か所が『ペットと一緒OK』です。形式も、全区画をペットOKにしたり、人間だけの区画とは別にペットOKの区画を作ったり、ペットと一緒に眠る樹木葬の区画を用意したり、多くの人が一緒にまつられる納骨堂にペットも一緒に入ったりと様々です」。
――樹木葬もあるのですか。どういう風に一緒に眠るのですか。
「都内の寺の例ですと、境内に樹木葬の区画を用意し、緑地(植栽)周辺に人間とペットの骨壺を並べて埋葬します。13回忌にあたる12年後か20年後に、骨をまとめて合祀します。最終的に一緒に土に帰るわけですね。希望に応じ、一緒になるまでの期間を5~7年に短くすることもできます」
――なぜ、一緒のお墓に入りたい人が増えてきたのでしょうか。
「ペットは家族の一員と思う人が多くなったことと、仏教にふれる人が少なくなり、ペット共埋葬をタブーと感じる方が少なくなったこともあると思います。仏教では、ペットは『畜生』で人間と一緒に供養してはならないという考えもありますから。しかし、最近はお寺の住職さんも、人々の希望に合わせる考え方が増えてきているようです」
――たくさんのペットと一緒に眠る人もいますか。
「5~6匹のペットと一緒に眠っている人は結構います。ペットOKの霊園ができたのを機に、一度埋葬していたペット専門の霊園からペットのお骨を移すケースも多いようです。どうしても一緒になりたいのでね。お骨を何か所かに分散し個別に支払うより、まとめた方がお参りが楽で費用も掛からないという話もよく聞きます」