魚介類の放射能検査「基準値越え」はゼロ
相馬市を含む相双地区の港で水揚げされた魚は、相双漁協相馬原釜地方卸売市場(松川浦漁港)にある放射能検査装置を使って自主検査を行う。国の基準値は1キロ当たり100ベクレルだが、福島県漁連の出荷方針では、それより厳しい同50ベクレルとなっている。無論、基準値を超えたら出荷停止となる。
福島県水産課がウェブサイト上で公表している水産物の緊急モニタリング検査結果で、相馬市をはじめ南相馬市、浪江町、新地町、大熊町、富岡町の沖でとれた海産物のデータを検索してみる。2016年12月26日~17年3月17日の試験操業で、海産物の検体数は1969、うち福島県の基準を超えたのはゼロで、大半が「検出せず」となっていた。その前年も、検体数3594で基準超えはなかった。
こうした魚は、検査報告書や県漁連の証明書が添付されたうえで出荷される。だが、いまだに「福島産」の魚介類を不安視する消費者がいるのも事実だ。
だからこそ、菊地さんは生産者と消費者をつなぐ活動に力を入れる。2015年10月に「そうま食べる通信」を創刊し、共同編集長に就いた。年4回、相馬の季節の食材を会員に送るが、そこに漁業、農業、畜産業に従事する生産者が自ら取材、執筆した情報誌を添える。「フェイスブック」では、投稿を通じてフォロワーと日常的に交流する。
イベント開催も積極的だ。消費者を招いて地元の食材を直に味わってもらい、収穫体験も行う。一度相馬を訪れれば、生産者の顔が見えれば、必ずその魅力に気づいてもらえる――。
都会のスーパーに並ぶ魚介類は、パック入りの切り身がメーンだ。消費者は、誰がどれほど苦労してとったのか、そんなストーリーは描けない。だから、トラブルが起きれば不安になる。一方、手にした魚介類の生産者を直接知っていて信頼できる人物だと確信していれば、「あの人がとった魚なら大丈夫」となるだろう。顔が見えることは、どんな「安全証明書」よりも強いかもしれない。