高校入学前に「地毛証明書」の提出を求められた――。ツイッターでのこんな投稿が話題を集めている。髪を染めたり、パーマなどをしたりしておらず、生まれつきの髪の毛であると証明するためのものだというが、投稿者は「狂ってる」と嫌悪感を露わにしている。
一方、この投稿には「意味不明だわ」と共感する声もあれば、「一般的じゃないのか」と理解を示す声もある。導入している高校に話を聞いた。
手を加えていない髪の毛と証明する
「地毛証明書」のツイートは2017年3月21日にあった。投稿者は中学校教師なのだろうか。「高校進学が決まった生徒が『地毛証明書』の提出を求められた、という話をしていた。地毛証明書。私の髪の毛は一般的な人々と異なる外見をしていますが、自分からそうしたわけでありません、ということを学校に証明する書類」と書かれている。続けて「あまりのグロテスクさにめまいがした。こんなものを許容する社会は狂ってる」と不快感を露わにした。地域は不明だが、このツイートに反応したユーザーらの意見は一様ではなかった。
「地毛証明書って一般的じゃないのかな」
「髪の毛がどういう色かの証明書って意味不明だわ」
「さすがに気持ち悪さはある」
「え、地毛証明書って『違反してるでしょ』って勘違いされてしまう子を守るためにあるものでしょう?」
地毛証明書の実態を探るべく、J-CASTニュースが東京都教育委員会に取材したところ、教育指導部の担当者は「地毛証明に関する定めは都にはありません」とした上で、「高校ごとに独自に定めているところがあるという話は聞いています。身だしなみの指導に力を入れる高校が多くなっているようです」と話していた。
都内の高校に対して取材を進めていくと、ある高校の副校長が「地毛証明書の定めはあります」としてその内容を明かした。頭髪について定めた校則の運用規定のひとつで、たとえば赤っぽい色をしていたり、パーマがかかっているように見えたりする生徒でも、手を加えていない髪の毛だという地毛証明をすることで、頭髪指導の対象外になる効果があるという。
「乳児期の写真」と「親の署名・捺印」
この高校では、証明に必要なのは「乳児期の髪の毛が確認できる写真」と「親の署名・捺印」の2点。必要があれば、親が髪の毛の事情についての説明を書く。用紙は入学前の新入生説明会で配られ、入学後に任意で提出する。全生徒が出す必要があるものではないが、あまりに外見上不自然であれば学校側から提出を求める場合もあるという。証明できれば「地毛証明証」というカードが発行され、染髪やパーマなどをしていると思った教師が頭髪指導をしようとした場合でも、「証明証」を見せることで指導を受けずに済む。「手を加えていない地毛でさえあれば、かなり明るい茶色であっても認めています」という。
ツイッター上ではこうした「地毛証明」に拒否感を示す声もあったが、生徒からはどのように受け止められているのか。副校長は「嫌がる生徒はいますよ。好きな色に染めたいという生徒もいますし、学校から縛られるのは気持ち良くないとは思います。丁寧に説明していくしかないでしょう」と話す。
それでも導入している背景について、こう明かした。
「かつて、うちの生徒が茶髪をはじめ、騒音などでも近隣住民に多大な迷惑をかけていた時代がありました。学校全体のイメージが悪くなり、就職や進学にあたっても出身高校名だけでマイナスの印象を持たれ、他の多くの生徒にも悪影響を及ぼすようになりました。そのため、身だしなみや風紀に関しての指導体制をしっかりしていこうと校則を整備する中で、頭髪については生まれつき少し違いがある生徒もいるということで、数年前から地毛証明を取り入れた次第です」
九州地方のある県立高校の生徒指導部担当者もJ-CASTニュースの取材に対し、「県の取り決めはありません。当校独自に地毛証明の制度を定めています」と話している。