日産自動車「ノート」の勢いが止まらない。従来のハイブリッド(HV)車とは全く異なる新動力システム「e-POWER」を搭載したニューモデルの人気が凄まじく、2016年11月の発売から4か月で登録車の月間販売台数トップの栄光に二度も輝いている。
そんなノートe-POWERの購入者のなかには、トヨタやホンダといった他メーカーからの「乗り換えユーザー」も少なくない。これまで日産車とは縁が無かった人々が、続々とe-POWERへと車を乗り換えているのだ。
――そこでJ-CASTニュースは今回、他社からの乗り換えユーザーを含む複数のノートe-POWER購入者にインタビューを実施。あわせて、車販売の「プロ」であるディーラーの担当者にも話を聞き、両方の視点から「歴史的ヒット」の背景を探った。
ノートe-POWERが「選ばれるワケ」を探った
日産車では「30年ぶり」の歴史的ヒット
ノートe-POWERの最大の特徴は、エンジンの出力で発電し、その電力でモーターを動かすという新しい駆動システム。これにより、静かで力強い100%電気モーターでの走行を実現するとともに、従来の電気自動車で不便な点として指摘される充電の手間も解決した。
モーターを動かすために、エンジンを発電機として効率よく使うことで、クラストップの低燃費(1リットルあたり37.2キロ)も達成。アクセルペダルの踏み戻しだけで加速・減速ができるe-POWER特有の「e-POWER ドライブ」を活用すれば、さらに楽しく効率的な運転が可能だ。
このように、従来のHV車とは一線を画す斬新な機能が目白押しのノートe-POWER。その売れ行きも記録的で、発売月の2016年11月にはノートを日産車では約30年ぶりとなる登録車/軽自動車全体で月間販売台数1位(日本自動車販売協会連合会調べ)へ押し上げた。
さらに、17年1月にも登録車月間販売台数で再度トップに輝き、ミニバンの「セレナ」とともに1位と2位を独占。これは、日産としては1984年9月の「サニー」と「ブルーバード」以来、約32年ぶりの出来事だ。
革新的な「e-POWER」駆動システム
こうした歴史的なヒットの中で目立ち始めているのが、これまで他メーカーの小型車を利用していたユーザーがノートe-POWERに乗り換える動きだ。実際、ツイッターやネット掲示板などには、他メーカーからの乗り換えを報告する書き込みが数多く寄せられている。
ではいったい、こうした「乗り換えユーザー」にとって、ノートe-POWERを選ぶ「決め手」となったポイントはどこなのだろうか。
J-CASTニュースは今回、ツイッターを通じて複数の購入者へインタビューを実施。ノートe-POWER購入のきっかけや高く評価したポイント、購入後の「乗り心地」などについて詳しく聞いた。
「もう他の車には乗れなくなってしまいます」
まず話を聞いたのは、ホンダの「N-BOXカスタム」からノートe-POWERへと乗り換えた兵庫県の30代男性だ。もともと「ホンダが好きだった」と話す彼は、当初は「フィット」や「シャトル」といったホンダ車のHVモデルの購入を検討していたという。
彼はノートe-POWERの購入を決める前に、検討していた「フィット」のHVモデルに試乗。だがその時は、抱いていたイメージとは異なる運転感覚や乗り心地にガッカリし、一時は「このままN-BOXに乗り続ける」ことも考えたという。
そんな彼がノートe-POWERを購入するきっかけとなったのは、大手百貨店で実施されていた試乗会に参加したこと。そこで、ノートe-POWERの「力強い加速力」や「運転しやすさ」に良い意味で驚き、試乗が終わってすぐに「この車にしよう」と決心したという。
試乗を経て考えが大きく変わった彼に、ノートe-POWERを選ぶ一番の「決め手」となったポイントについて聞くと、
「運転のしやすさ、加速の良さ、ワンペダルドライブ・・・これらを合わせて、運転が楽しいと感じさせてくれるところですかね」
と振り返っていた。
30代男性が購入した「e-POWER X」(ブリリアントシルバー)
購入後の感想を聞くと、「試乗ではなく毎日乗って感じることは、前方の視界が思ったより見やすい。死角が少ない感じがします」。その上で、ワンペダルで操作できる「e-POWER Drive」については、
「この走法に慣れてしまうと、もう他の車には乗れなくなってしまいますね。楽だし、自分の思い通りにアクセルペダルだけで加減速できるので、やはり運転してて楽しいなぁって思えます」
と改めて感心した様子で話していた。
なお、今回話を聞いた男性のように、従来のHV車とe-POWERの「違い」に言及する意見はインターネット上でも数多く見られる。ツイッターやレビューサイトには、
「プリウスみたいな従来のハイブリッドより良い感じがする」
「従来のハイブリッド車では、発進後すぐにエンジンが掛かりエンジン主体の走行になるのですが、このクルマはどこまでいっても気持ちいいモーターの加速が続きます」
といった声が出ており、従来のHV車との「差」に魅力を感じている人が多いようだ。
「ATなのにMTのような面白さ」
また、トヨタのミニバン「wish」から乗り換えた愛知県在住の20代女性は当初、金銭的な事情からホンダの「N-BOX」の購入を検討していたというが、
「(試乗した際に)エンジンをかける際の軽自動車らしい音が嫌だった」
と感じ改めて考え直すことに。
その後、彼女は夫と一緒にたまたま訪れた日産のディーラーでノートe-POWERと出会い、「今までにない走行システムに感動した」として購入を決意。具体的にどこに魅かれたのかを詳しく聞くと、
「旦那が試乗をして『一踏み惚れ』しました。乗っている感覚もとても静かで乗り心地も最高。車内空間もコンパクトカーとは思えない広さ。エコカーにしてはそこまで高くない値段と見た目のかっこよさを含めて購入を決めました」
と説明した。
20代女性が購入した「e-POWER X」(ブリリアントホワイトパール)
また、今回のインタビューでは、長年日産車を乗り継いできた「日産党」のユーザーにも話を聞いた。「ラフェスタ」「テラノ」「エクストレイル」などに乗ってきた千葉在住40代男性は、ノートe-POWERの購入を決めた理由について、
「実際に試乗したときのアクセルレスポンスとスムーズな加速が期待していた以上に楽しかった点が決め手です」
と話す。その上で、日々利用する中で「e-POWER Driveの利便性には驚いた」として、
「停止するときの制動の制御も見事なもので、所謂カックンブレーキにならずにスーッと止まってくれる点も実に素晴らしい」
と絶賛していた。
そのほか、ノートe-POWERが初めてのクルマだという茨城在住の10代男性は、「ATなのにMTのような面白さがある」とワンペダルでの独特な運転感覚を表現。「ブレーキパッドの減りがほとんどない」点にも魅力を感じるとしていた。
「日産党」の40代男性が購入した「e-POWERメダリスト」(シャイニングブルー)
この通り、今回の購入者インタビューでは、ノートe-POWER購入の「決め手」となったポイントについて、
「走りの楽しさ、面白さ」
を挙げるユーザーが目立った。特に、他メーカーからの乗り換えを決めたユーザーの場合は、ノートe-POWER独特の運転感覚を味わえる「試乗体験」が大きなきっかけになったようだ。
ディーラー担当者「試乗した人のほとんどが...」
では一方で、車販売のプロであるディーラー側はノートe-POWERのヒットについてどう見ているのだろうか。日産のライバルにあたる他メーカーの販売店担当者は、自社が販売している次世代エコカーの魅力を述べた上で、ノートe-POWERについても、
「他社さんの話ではありますが、電気ならではのモーターが凄いですし、走り出しは気持ちいい作りになっています。コンパクトカーで電気自動車の走りが良いという人であれば、ノートのe-POWERがいいと思います」
と高く評価していた。
そのほか、複数のメーカーの車を扱う販売店の担当者は、ノートe-POWERの場合は試乗した客の反応が他とは違うとして、
「試乗した人のほとんどが、電気モーターならではの加速性能や走りの力強さを口にしています。そうした反応を見ると、今までにない駆動システムを搭載している車だと改めて感じますね」
と話していた。
e-POWERの「走り」に販売のプロは...
世界で自動車に関する環境規制が強まる中で、従来のHV車は「もはやエコカーではない」として、減税の対象から外す動きも出ている。そこで国内外の各メーカーは、完全な電気自動車社会の手前のステージでの「主流」を目指し、新たなシステムを搭載した車を次々と発表している。
そんな中、革新的な駆動システムと「走りの面白さ」を両立した日産のノートe-POWERは、次世代エコカーの主導権争いで今後も大きな存在感を示していきそうだ。
ノートe-POWERの詳細はこちら。