森友学園問題で、2017年3月23日(首都圏などで)発売の週刊文春(3月30日号)に、籠池氏の「独白60分」の記事が載っている。
籠池氏の主張によると、塚本幼稚園の園長室で2015年9月5日、安倍昭恵夫人と「2人で」いた際に「安倍晋三から」と100万円の寄付を渡され、車で出た後に夫人から電話で「寄付金は匿名に」と言われた、という。100万円は「封筒」に入っていた、とも。(編集部注:執筆時は参院予算委の証人喚問前)
随行者が同室していないというのは、なかなか考えにくい
気になったのはまず、「園長室に2人」という点。昭恵夫人には政府公務員の随行者がいるが、その人が一緒でなかったのか。随行者は、筆者の経験ではSP(要人警護警察官)並の要人監視が求められる。これは仕事なので、被随行者である昭恵夫人も、随行者から「夫人と離れたら自分の仕事にならない」と聞かされているはずだ。そのため、随行者が同室していないというのは、なかなか考えにくい。
次に、「封筒」(文春記事では「白い封筒だったかな」「帯封あり」)であるが、籠池氏は今でも持っているのか。籠池氏にありがたかった寄付金であるので、封筒と帯封は保管していてもおかしくないのだが。
最後に、(寄付金を渡した後の)帰りの車の中での携帯電話の会話だ。車の中であれば、随行者が会話内容を聞いているはずだ。これは随行者に確認すれば何が事実であったのか、容易にわかるだろう。メールであれば、籠池氏側が持っているので公表すればいい。
随行者は、政府公務員であるので「公務」として昭恵夫人に随行している。随行といっても実は監視役である。公務として行っているので、もし裁判があり裁判所から求められれば、公務員も証人になる。職務上の秘密の場合には、裁判所は証人である公務員の監督官庁の承諾が必要であるが、公務を行う公務員はむしろ積極的に裁判での証人になることが要請されている。随行者はこうした責務を承知した上で随行を行っているはずだ。
仮に、籠池氏が偽証しているとするならば、政府はただちに籠池氏を告発せざるをえない。当然、随行者から当日の昭恵夫人の行動の報告を受けているはずだからだ。
問題の本質は「官僚にあまりに大きな裁量」
そもそも、今回のように寄付金をもらったという場合、挙証責任は受領者である籠池氏側にある。寄付金であれば、寄付名簿に記載し、領収書を発行する。これらがない限り、籠池氏は寄付金を立証できない。であれば、上のような発言をしただけで、偽証に問われるかもしれない。その場合、随行者の証言は重要な材料になるだろう。
今回の問題の本質は何か。それは、官僚があまりに大きな裁量をもっていることだ。前回のコラム(3月9日配信)でも指摘したように、国有地売却を競争入札にしなかったのは、国会ではなく官僚が決めた「政令」によるもので、官僚の裁量が大きい。裁量が大きいから、籠池氏も頼みたくなるのだ。
また、財務局の応接録も保存されていないが、これも財務省規則という官僚の決めたルールによるものだ。なぜ保存期間が短いのかというと、昔は資料の保存場所という理由があったが、今では電子書類なので、その言い訳はできない。結局、裁量が大きい官僚が責任逃れのために、文書の保存期間を短くしているとしか思えない。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ
ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に
「さらば財務省!」(講談社)、「図解ピケティ入門」(あさ出版)、「『年金問題』は嘘ばかり」(PHP新書)など。