温度が下がる鍋のなかで増殖
問題はその後だ。鍋に残ったカレーはしだいに温度が下がり、それにつれ、ウエルシュ菌は、いわば身を守る殻である芽胞から出て活動を再開。酸素を嫌う「嫌気性」のウエルシュ菌にとって、フタで閉じられた鍋のなかは好ましい状態になるため、発育に適した温度まで下がると発芽して急速に増殖を始めるという。
「一晩ねかせたカレー」は、江崎グリコのウエブサイト内にある「カレーのおはなし」によれば、具材のもつ旨み成分や甘み成分がソースに溶けだしてコクが増すなどしておいしくなる。その一方で、ウエルシュ菌増殖のプロセスも経ているわけで、危険性も高まっていることになる。
「東京都の食品安全情報サイト・食品衛生の窓」は、ウエルシュ菌による食中毒予防のポイントとして(1)前日調理は避け、加熱調理したものはなるべく早く食べること(2)一度に大量の食品を加熱調理したときはウエルシュ菌の発育しやすい温度を長く保たないように注意すること(3)保管するときは小分けしてから急激に冷却すること――などを挙げている。
ウエルシュ菌による食中毒は厚生労働省の統計によると、06年~15年まででは、年間19~35件発生。11年にはこの10年間で最多の2784人が発症した。