「男性に乳房の発育を認める疾患」
そもそも、女性化乳房とはどのような症状か。公益財団法人難病情報センターのウェブサイトは、「男性に乳房の発育を認める疾患」で、加齢や肝疾患・甲状腺中毒症・薬剤服用などにより後天的に発生するものを「続発性女性化乳房症」と解説している。なお、「小児期より発症し先天性ないし遺伝性と考えられる遺伝性女性化乳房症」もある。花粉症の薬が関係するならば、前者だ。
耳鼻咽喉科の開業医に取材すると、女性化乳房は、肝臓の機能が低下して女性ホルモンの「エストロゲン」を分解しきれず過剰になり起きることが知られていると説明した。ホルモンのバランスが崩れてしまうのだ。では花粉症の薬が原因になるとしたら、どのようなケースが考えられるか。この医師が薬剤師に確認したところ、アレルギー症状を抑える「抗ヒスタミン薬」を挙げ、こう説明した。
抗ヒスタミン薬には、花粉症や鼻炎を抑えるために使われる「H1ブロッカー」と、胃腸薬に用いられる「H2ブロッカー」の2種類がある。それぞれ、ヒスタミンが「ヒスタミンH1受容体」「ヒスタミンH2受容体」にくっついて発症するのをブロックする役割だ。
薬剤師によると、まずH2ブロッカーには、「アンドロゲン」という男性ホルモンの受容体にくっついて男性ホルモンの作用を邪魔し得る。一方H1ブロッカーは、ヒスタミンH1受容体だけでなく、非常にまれにH2受容体もブロックしてしまう場合がある。そのため、H2ブロッカーのように男性ホルモンの作用を妨害する可能性もゼロではなく、結果的に女性化乳房につながるかもしれない。