日本の小学生の3.69%がかかっている小児ぜんそく(2016年12月・文部科学省調査)。いたたまれない思いで、深夜の発作に苦しむわが子の背中をさすった親は多いだろう。
最近、ぜんそくの症状を軽くしたり、予防したりすることにビタミンDが期待できるという研究が相次いで発表された。本当ならうれしい報告だが。
ビタミンDサプリで入院が必要な重い症状が61%減った
ビタミンDは、魚介類やキノコに豊富に含まれている。また、日光に当たると体内で形成される。カルシウムやリンの吸収を助け、骨の健康を保つ働きがある。不足すると、子どもではくる病、大人では骨粗しょう症になることが知られている。
このビタミンD にぜんそくの症状をやわらげる効果があるという研究を発表したのは、英ロンドン大学のチームだ。科学論文サイト「Cochrane database of systematic reviews」(電子版)の2016年9月5日号に論文を掲載した。
同サイトのプレスリリースによると、以前から血液中のビタミンD濃度が低いぜんそく患者は症状が悪化しやすいことが知られていた。また、ビタミンDにはぜんそくを悪化させる風邪を予防する効果があるため、医師がぜんそく患者にビタミンDを処方することが一般的に行なわれている。そこで、研究チームは、ビタミンDをぜんそく患者に投与すると症状が軽くなるかどうか、ビタミンDを投与したケースを報告した過去の論文を改めて分析し直した。
対象になった論文は、日本やカナダ、インド、ポーランド、英国、米国で行われた9件の研究だ。対象の患者は、子どもが425人、成人が658人だった。対象者は、通常のぜんそく薬であるステロイド剤に加え、ビタミンDのサプリメントを飲んだ人が多い。ビタミンDのサプリを飲んだ人と飲まなかった人を比べると、飲んだ人は症状が悪くなるリスクが37%減った。また、入院や救急受診が必要になるほどの重度の症状になるリスクも61%減った。つまり、普通のぜんそくの治療にビタミンDの摂取を加えると、ぜんそくの症状が軽くなるわけだ。ただし、なぜそうなるかは論文では明らかにしていない。
研究チームは、この結果にまだ慎重である。論文の筆頭著者のエイドリアン・マーティノー博士は、プレスリリースの中でこう語っている。
「興味深い結果ですが、いくつか注意点があります。1つ目は、調査の対象者が、軽度または中等度のぜんそく患者がほとんどだったこと。そのため、重度のぜんそく患者にもビタミンDが有効かどうかは、今後の臨床試験で確認する必要があります。2つ目に、ビタミンDの効果は、ビタミンD濃度が初めから低い人に限られるのかどうかが、はっきりしていません。こうした疑問を調べるために、引き続き研究を進める必要があります」