東京都議会の百条委に向かう前、石原慎太郎・元都知事は2017年3月20日正午前、自宅前で記者団に心境をきかれ、「天気晴朗なれど(も)波高し」と答えた。
「天気晴朗~」は、日露戦争中に行われた日本海海戦(1905年)の出撃の際、日本の連合艦隊(東郷平八郎・司令長官)が東京の大本営に打電した文言の一部で、「名文」との指摘もある言葉だ。石原氏は3月3日の記者会見前には、自宅前で心境について「果し合いに出かける侍」と語っていた。
安倍首相は、衆院解散前に...
石原氏は3月20日、百条委へ向かうため車に乗り込む際、記者団から「現在の心境」を質問され、「天気晴朗なれど(も)波高し」と答えた。その後、「君ら教養ないから分からんだろ」とも。
「天気晴朗~」は、政財界の関係者も時折使う言葉としても知られる。たとえば、時事通信(2016年3月16日)によると、就任を間近に控えた日本郵政の長門正貢・次期社長(当時)は、抱負を語る中で「天気晴朗なれども波高し」と述べ、障害はいろいろあるが、「グループ全社一丸となって大海原に繰り出して、大航海をエンジョイしたい」と続けている。
安倍晋三首相も使っている。2014年11月17日、安倍首相は公明党の結党50周年会合に出席し、経済政策「アベノミクス」について、「天気晴朗なれども波高し、という状況かもしれない」と述べた。これが、日本海海戦の直前に打電された文言である事を受け、当時、複数のマスコミが、衆院解散が近い事を示唆する発言として注目し報じた。実際、この年の11月21日に衆院が解散された。もっとも、同じ言葉であっても、先の長門氏と安倍首相とでは、使用する文脈・心境は異なるようだ。
産経新聞「この史上の名文」
また産経新聞は、2009年5月27日付朝刊の「次代への名言」でこの言葉を伝えている。「(文章・電文の)起草者はだれか、という議論はおく」とことわりながら、「敵艦見ゆとの警報に接し連合艦隊は直(ただち)に出動之(これ)を撃沈滅せんとす、本日天気晴朗なれども波高し(東郷平八郎)」(編注:記事原文ママ)と、前段部分も含めて掲載。「この史上の名文」と評価している。
今回の石原氏の発言がテレビニュースで流れると、ツイッターには、
「うまい言い回しだ」
「勝算ありってことか」
といった反応が出ていた。中には、以前の会見前の「果し合いに出かける侍」と今回の「天気晴朗~」の発言を引きながら、石原氏は結局は百条委でも「知らぬ存ぜぬ」の姿勢であり、「武士でも何でもない」と皮肉る人もいた。